第2話 入学式

「さよー!準備できた?」

1階にいるお母さんの声が聞こえた。

「んー今いくー」

今日は高校の入学式だ。高校生になった実感はあまりなく、ここ最近はふわふわした気分だった。だけど制服を着ると気が引き締まるような感じがした。

わたしは明と同じ高校に入学した。明のことが諦められなかったから。違う高校に行ったら明との関係が壊れちゃう気がしたから。中学時代の教師からは

「もっと上の学校を目指しなさい」

と言われたが、

「通学するのが楽な学校にします」

と適当な理由をつけて聞き流した。一方両親は

「紗夜が決めたことならいいよ」

と言ってくれた。わたしのことを信頼してくれている両親には感謝しかない。まあ、両親には本心がバレている気もする…。


「柊さん、お互いご入学おめでとうですね!」

入学式へは明の家族と合流していくことになっていた。高校の制服を着た明を見てドキドキした

「おはよう。なんか制服違うと雰囲気も変わるね」

「ん。確かにお互い中学の制服と雰囲気違うもんな」

明の中学の制服は学ランだったが高校はブレザーだった。

『学ランは学ランでよかったけどブレザーもいいな』なんて思いつつ、明と他愛のない話をしていたらすぐ学校に着いてしまった。


事務室で受付を済まして、両親は直接体育館に向かった。新入生は受付でクラス表をもらって自分の教室に向かう。わたしはクラス表を見て目の前が暗くなるようなショックとともに何とも言えない不快感に襲われた。

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「おはよう」

「おはよう明。改めて入学おめでとう」

「ありがとう」

母は誕生日など記念日の朝に必ずおめでとうと言ってくれる。今日は高校の入学式だ。高校生になった実感はあまりない。紗夜も同じ高校だし、中学と変わらずに過ごせるような気がしている。…紗夜が同じ高校を目指していることを知ったときは驚いた。紗夜ならもっといい高校に行くだろうと思っていたから。俺としては中学時代と同じように紗夜と一緒にいられることが嬉しかった。


「柊さん、お互いご入学おめでとうですね!」

「柏森さん!おめでとうございます」

入学式へは紗夜の家族と合流していくことになっていた。

「おはよう。なんか制服違うと雰囲気も変わるね」

「ん。確かにお互い中学の制服と雰囲気違うもんな」

紗夜の制服姿は正直可愛かった。中学の制服はほとんど黒一色で地味めだったけど、高校の制服はリボンもスカートもチェック柄でだいぶ印象が変わっていた。学校に着くまで紗夜と話していたが緊張しすぎて頭に入ってこなかった。


学校に着き事務室で受付を済まして、両親は直接体育館に向かった。新入生は受付でクラス表をもらって自分の教室に向かう。俺はクラス表で自分のクラスを確認した後紗夜のクラスを確認した。

『まじかー…』

紗夜とクラスが分かれてしまった。

間違いだったらいいなと思いつつ再度クラス表を見る。…やはり間違いじゃなかった。ショックで何度もクラス表を見返して自分のクラスに知っている名前があることに気づいた。

『井上麻美…。え?』

中学時代に告白してくれた井上さんが同じクラスにいた。

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