第2話
100:名無しの視聴者
カナンの配信みた?
101:名無しの視聴者
みた、カナン危なかったね
生きててよかった。救助した奴はナイス。
102:名無しの視聴者
マジで何者なんだ、オーガ一撃で倒してたぞ
103:名無しの視聴者
背後からの鮮やか過ぎる一撃
俺でなきゃ見逃しちゃうね
104:名無しの視聴者
オーガってパーティ戦闘推奨の危険モンスターだったはず、Aランクでもないと単独撃破なんてできない。
どこかのAランク探索者なんだろうか。
105:名無しの視聴者
まるで会社帰りみたいなスーツ姿のAランク探索者.........?
106:名無しの視聴者
深夜帯にそんなAランクがいるのか?
107:名無しの視聴者
そんな奴いたら絶対知ってるはずなんだけどな
108:名無しの視聴者
探せ探せ、明らかに只者じゃないぞ
109:名無しの視聴者
まあでもカナンの配信が放送事後で終わらなくてよかったよ。
110:名無しの視聴者
それはそう
■■■
翌日。
当然のように出勤である。
日が沈みまた昇るように、公務員の仕事にも終わりはない。次の日には次の日の仕事があるのだ。
「ふふ、死にそう.........」
「パイセン、疲れてるっスね」
後輩の佐藤君が心配そうに見ている。
昨日_____いや今日の2時頃。
背後からオーガの首をぶった斬り、そのまま負傷していたダンジョン配信者の少女を救助した俺は、彼女を病院にぶち込んでようやく家に帰ることができたのだった。
帰ったのは朝方の5時頃だったぜ。
倒れ込むようにして寝たが、実質的な睡眠時間は3時間を切っている。
コーヒーというカフェインでどうにか誤魔化している状態だ。
だが、そんなことは知るかと言わんばかりにメール処理、窓口対応、電話相談、書類作成、そして会議。
情け容赦なく襲い来る業務をなんとか処理し、どうにか昼休憩に辿り着いた俺は燃え尽きる一歩手前といったところである。
「少し、寝るわ」
一時間しかない昼休みを睡眠時間に充てよう。
正直、身体が持たない。
今は少しでも休む時間が欲しいのだ。
備え付けの仮眠室に向かおうと席を立ち上がろうとして____
「おっと河見、少し待ってくれたまえ」
「.........なにか用ですか? 雨宮課長」
俺を呼び止めたパンツスーツの女性に向き直った。
雨宮リンネ
30前半にて課長役職を得ている天才である。
本来、その若さで付ける役職ではないのだが、昔のダンジョンでの大魔獣事件を解決した手腕を評価されて昇進したのは夜湖町役場では語り草だ。
どう見ても20代前半の美貌と、異例の昇進の二重の意味でバケモノである。
「うん、用がある。実は来客でね、すぐ202会議室へ来てくれたまえ」
いやな予感がする。
経験上、雨宮課長がにこやかな時は高確率で面倒事があるのだ。
だが上司の命令は絶対だ。
悲しいことに、公務員が私情で逃げることは許されないのよね。
「了解です」
観念して課長の後をついていく。
「ときに河見君、昨日は大変だったようだね」
「昨日ってか今日ですけどね?」
「ははは、退勤するまでが昨日だよ。もちろんジョークだがね」
笑えねえよ。
「まあ、最近流行のダンジョン配信者でしたよ。死んでなかったのはラッキーでしたね。死体を担がなくて済んだ」
「おっと素っ気無いな。ダンジョン配信者は嫌いかな」
「まさか、むしろ応援していますよ。夢と希望に命を懸ける彼らには頑張って欲しいと思ってますね」
とにかく命を大事にして欲しい。
ソロで潜るな。
調子に乗って深層にいくな。
彼らの無事に俺の残業が掛かっているのだ。
理由はどうあれ、俺ほど切実にダンジョン配信者の無事を願ってる奴もなかなかいないと思ってる。
嘘と欺瞞に満ちた回答も、どうやら雨宮リンネにはお気に召したようだった。
「そうかそうか! ならば心配はいらないな!」
「心配、ですか?」
「実は来客というのが、そのダンジョン配信者でね! 助けてくれた君にぜひお礼を言いたいという事だったんだ。あといくつかお願いがあるとも言っていたな」
ソレ絶対お礼を言うだけじゃないですよね。
「すいません、急にお腹が痛く成って来たんで逃げていいですか」
「いいやダメだね!」
言うが早いか、課長が会議室のドアを開け放つ。
今思えば、これが俺の人生が大きく変わった出逢いだったのだろう。
それが良かったのか、悪かったのかはわからないが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます