第26話 引くわけにはいかない

 愛夏の肌に手をのばしていく。

 きっと、これで……俺は。


 お互いに息が荒くなっていく。

 そうだ。

 俺も愛夏も気持ちは同じなんだ。義理の兄妹だし……だから、この先に進んでも問題はない。


 ゆっくりと丁寧に服を脱がせ――



「おーい、紗季。じゃがいもを持ってきたぞー! ……って、なんだこりゃあああああああああああああああああ!?!?」



 愛夏を下着姿にした瞬間だった。


 じっちゃんが予告なく現れ、場が凍り付いた。



「「…………んぁ!?」」



 俺も愛夏も驚いて時が止まった。



「お、お前達……なにを。いや、そういうことか。じっちゃんが悪かった。ごゆっくり!!」



 なぜか涙目で逃走するじっちゃん。

 なぜ泣くぅ!?


 いやしかし、おかげで俺は冷静になれた気がした。



「すまん、愛夏」

「ううん、いいの。お兄ちゃんの気持ちが少し知れた気がするから」

「そ、そっか」


 ちょっと視線を合わせ辛くなって、自然と別れた。


 俺は自室へ。愛夏は……なにをしているのだろう。


 ふとスマホを覗くと通知が入った。


 これは……早瀬さん。

 そういえば連絡先を交換していた。



 早瀬:明日からよろしくね!



 そ、そうだった。早瀬さんとは恋人のフリをしなきゃいけないんだった。でも、あくまでフリだ。がんばらないとなぁ……。


 けど、それよりも愛夏の方が気掛かりだった。


 ベッドから立ち上がろうとすると、隣の部屋からなにか聞こえた。



『…………お兄ちゃん』



 ん? 妙な声が。


 壁に耳を立ててみた。


 愛夏のやつ、エロゲーでもやっているのか? まったく、仕方のない奴だな。


 止めにいこうと愛夏の部屋へ向かった。


 扉を開けた瞬間、俺は衝撃のあまり立ち止まった。



「…………あ」


「え……お兄ちゃん、なんで……」



 下着姿の愛夏がスマホを見ながら、なにかトンでもないことをしていた。こ、これはまさか……!!

 今までもそういうことを……していたのか!?



「愛夏、おまえ……」

「お、お兄ちゃん、こ、これは……」


 赤面して涙目になって、世界の終わりみたいな顔をする愛夏。……その気持ち分からんでもない。俺は中学生の頃、じっちゃんに見られたことがあるからな。


「そうだったか。愛夏は俺のことがそんなに好きだったんだな」

「…………だ、だ、だって! いやああああああ、もう死んじゃうううううううううう!!」


 ようやく俺は愛夏の本当に気持ちに気づいた。

 こんな状況になってようやくだ。


 薄々は気づいていたけど、でも本当かどうか分からなかった。でも、これなら確定だ。


「落ち着け。話がある」

「落ち着けないよ! 出てって!! 死んじゃうから!!」



 いや、ここで引くわけにはいかない!

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