第23話 ノーブラな義妹

 愛夏の手作り弁当をいただき、昼食を済ませた。

 風吹さんのことも伝えると納得してくれた。

 とりあえず問題なさそうだ。


 教室へ戻り、早瀬さんの相談を受けようとしたが時間がなかった。放課後に話を聞くことにした。



 ――放課後。



 一日の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に早瀬さんがやってきた。



「時間、いいかな」

「もちろん。相談だったよね」

「うん、教室では話せないから……二人きりになれる場所でお願い」


 突然の提案に俺はドキリとした。

 二人きりで……だと!?


 ガードが超固いことで有名な早瀬さんと二人きり……奇跡かな?


 教室を出て、廊下を少し歩いて人気のない通路で話すことに。


「ここなら人は来ない」

「ありがとう。……それでね」


 早瀬さんは、恥ずかしそうにソワソワしながら視線を送ってくる。


「お、おう。どうした」

「わ、私……」

「うん?」

「私と付き合ってくれない……かな」


「え?」



 う、うーん……? 俺の耳がおかしいのかな。早瀬さん、今なんて言った?



『私と付き合ってくれないかな?』



 瞬間、俺は頭が真っ白になった。



 えっと……うそ?



 早瀬さんから告白された!?



「突然ごめんね。でも、どうしても付き合いたくて」

「どうしても!?」

「そうなの。ちょっと理由があってね」

「どんな理由?」


「知っているかもしれないけど、私ってよく告白されるから。だからね、彼氏がいれば止まるかなって」


「つ、つまり俺が彼氏のフリをすると?」

「そ、そうなの!」


 な、なんだ、そういうことか!

 それなら別に問題ない気がする。

 早瀬さんを助ける意味でもアリだ。


「ただ、愛夏を心配させたくないから……これは二人きりの秘密ってことでいいかな」

「もちろん! だからね、これからは付き合っているってことでお願い」

「了解。フリとはいえ、俺としても嬉しいよ」

「困った時はお願いね」

「ああ、任せろ」


 そうだ、フリなんだ。

 本当に付き合うわけではない。

 でも、それでも俺は最高の気分だった。

 早瀬さんと少しでも親密になれるのなら、なんだってするさ。


「じゃあ、まずは契約ということで」


 握手を求めてくる早瀬さん。

 そうだな、ここはビジネスライクなノリで。


 俺は緊張しながらも、早瀬さんと握手を交わした。


 小さい手だなぁ……。


「よろしく」

「こちらこそ!」


 これで早瀬さんの件も終わった。


「じゃ、俺は愛夏を迎えに行かなきゃだから」

「本当に仲が良いんだね、うらやましい」

「そうかな。まあ、一緒に住んでるし」

「そっか。妹だもんね」

「そ。大切な妹さ」


 俺は「またね」と挨拶をして、そのまま一階へ降りた。

 昇降口には愛夏の姿があった。


 靴を履き替え向かうと、愛夏は俺の前まで走ってきて腕に抱きついてきた。


「お兄ちゃん、遅い」

「悪い悪い。ちょっと用事があったんだ」

「早く帰ろ。エロゲーやりたい」

「ば、ばか。学校でエロゲーとか言うな」

「ちなみに、今ノーブラ」

「だから、そういうえっちな発言は――って、なにィ!?」


 と、ということは……俺のこの腕の感触は……ほぼ生の!!

 俺はまた頭が真っ白になった。


 これは……参ったな。


 完全に不意打ちを食らった。

 愛夏がここまでしてくれるなんて感激しかないっ。

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