第22話 お悩み相談②

 部室はややホコリっぽい。

 廃部になってから掃除されていないようだった。

 換気の為、俺は窓を開けた。


 それから風吹さんの方へ向き直った。


「それで……悩みって?」

「はい、実は動画投稿をしてみたくて、よく分からないので教えて欲しいんです」

「動画投稿……ね。なんで俺なんだ」

「愛夏ちゃんに聞いたんです。先輩はパソコンに詳しいって」


 なるほどね。確かに詳しい方だとは思う。

 じっちゃんの知識を継承しているので、それなりの……はずだ。

 最近は動画投稿サイトに動画も投稿したりしている。主に畑仕事のことだけど。

 おかげで若干の広告収入を得ていた。

 だから教えられる程度の立場にはいると思う。


「そういうことか。動画投稿って、具体的になにをしたいんだい?」

「コスプレです! ほら、最近可愛い衣装で踊ったり、ピアノを弾くヤツがあるじゃないですか~」


 動画投稿サイトは、そこそこ落ち着き始めているものの、まだまだ需要はある。

 そういうコスプレをして投稿をする女性も多く存在する。けど、今はスキルも必要な時代だ。単にコスプレだけではなぁ……。


「ちなみに、風吹さんはコスプレ以外の特技ってある?」

「…………う」


 突然固まる風吹さん。

 おいおい……その顔は“ない”って書いてあるぞ。

 まずいぞ。

 コスプレだけでは弱すぎる。


 そりゃ多少は再生数やチャンネル数は伸びるだろうけど、それでも一定数稼いだところで横ばいとなろう。



「なにかスキルがないと今の時代は厳しいかも」

「やっぱりそうです~?」

「出来ればあった方がいいね。とはいえ、風吹さんは美人で可愛いから、ワンチャンあるかも」


「……そ、そんな。あたしなんて……」



 モジモジと嬉しそうに照れる風吹さん。

 この可愛さだけでウケる気はしている。

 とはいえ、俺は今まで畑系投稿者として不定期投稿していただけ。人物を撮って投稿とか経験はほとんどなかった。

 少し不安はあるけど、やってみる価値はあるかなぁ。



「風吹さんのコスプレに期待するとして、まずはお試しでやってみるか~」

「本当ですか!」

「ああ、その代わり畑の看板娘もやってもらうけどね」

「全然いいですよー! それで売上とかアップするなら!」


 この際だし、愛夏にもコスプレしてもらうか。二人の力を合わせて、じっちゃんの畑を有名にする。で、無人販売ではなくて通販で大儲けするんだ。

 いずれは俺が受け継ぐ畑を今、売り出すチャンスってわけだ。

 これで一生安泰になるかもしれない。


 ……よし、決まりだ。


 これを愛夏にも相談しよう。


 あ……でも、早瀬さんの件もあったな。


 ひとまずは昼飯にして、それからにしよう。



 ◆



 愛夏と合流すると無言で俺の腕を引っ張った。……これはマズイ。



「あ、あのさ……愛夏。風吹さんのことだけど」

「お兄ちゃん、風吹ちゃんから告白されたんだね……」


「へ」


「わたしだってお兄ちゃんのこと――」

「なに言っているんだ。風吹さんは動画投稿のことで相談してきたんだ」


「え……」



 事情を説明すると愛夏は赤面して、俺からマッハで離れた。……な、なぜぇ? けど、誤解はとけたようだ。昼飯を食べながら、詳しく話そう。

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