第21話 お悩み相談①

 今日も学校がある。

 けどもう週末。ようやく金曜日を迎えた。あと一日がんばれば土日。久しぶりにゆっくりできるのだ。


 ……愛夏は、まだ出てこない。


 俺は準備を進め、愛夏を待った。



 仕度を済ませ、玄関で待機していると制服姿の愛夏が現れた。



「やっと来たか」

「今朝は突き飛ばして……ご、ごめんね」

「なんだ、気にしていたのか。いいって」


 昨晩は俺の方が幸せをもらっていたのだからな。貰い過ぎなほどに。


「そぉ?」

「ああ、なにも問題ない。それより、遅刻するぞ」

「うん、学校行こ」


 通学路を歩き、まぶしい空を仰ぐ俺。

 ……ちょっと暑いな。


 そろそろ初夏ってところだろうか。汗が少しにじむ。衣替えもしなきゃいけないな。


 無事、学校に到着して早々、廊下で風吹さんに出会った。



「おはよー! 愛夏ちゃんと先輩!」



 元気いっぱいに挨拶してくれた。太陽のようにまぶしい。


「おはよう~」

「おはよう、風吹ちゃん」


 愛夏は俺から離れ、風吹さんと一緒に教室へ向かった。


 と、思ったら風吹さんが俺の方へ向かってきた。……なんだ?


「あ、あの……先輩」

「どうしたの、風吹さん」

「あとでお話しできませんか?」

「い、いいけど……どうしたのさ?」

「悩みがあるんです」

「悩み?」

「あとで話しますから」


 風吹さんは、くるっと背を向けて行ってしまった。……悩みか。なにかあるのかな。

 ちょっと心配だ。



 ◆



 教室へ向かい、授業を進めていく。

 けど……退屈だ。

 面白いことはなにひとつない。けど、嬉しいことはあった。最近、休み時間や昼休みに早瀬さんが話しかけてくれることだ。


「ねえ、小野寺くん」

「なんだい、早瀬さん」

「ちょっと相談があるんだけど、いいかな」

「そ、相談?」

「だめかな」


 もちろん、だめではない。

 けど、風吹さんとの約束もあるんだよなぁ……。順番でいっか。


「分かった。けど、先約がいてね」

「そうなんだ。その後でもいいから」

「了解。じゃ、終わったら教えるよ」

「ありがとう」


 嬉しそうに微笑む姿に、俺はドキドキした。早瀬さん……ホント、可愛いな。あんな可憐でお嬢様っぽいのに彼氏のひとりもいないとか、不思議なこともあるものだ。


 昼休みになり、俺は先に風吹さんの元へ向かった。


 もちろん、愛夏もセットで来るのだが……今回は止めた。


「すまん、愛夏」

「えー! お兄ちゃん、風吹ちゃんと二人きり……なの」

「少し話があるんだってさ」

「でもぉ!」

「仕方ないさ。分かってくれ」

「むぅ」


 膨れながらも、愛夏は承諾してくれた。

 あとで機嫌を直してやらないとな。


 ……さて、風吹さんのお悩み相談といこうか。


「じゃ、人気のない場所で」

「お願いします、先輩」


 こんな時は廃部になった部室を使うか。

 二階にある元将棋部の部屋へ向かった。

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