第19話 義妹がお風呂から出てこない

 約束の一時間が経った。

 すると俺のスマホに連絡が入った。相手はじっちゃんからだ。


 メッセージアプリを覗く。



 じっちゃん:北口の駐車場で待っているぞ



 指示通り、愛夏を連れて北口へ。

 じっちゃんの軽バンを直ぐに発見。乗り込んだ。



「ただいま、じっちゃん」

「おぉ~、紗季。ゲームセンターで乱獲したのか?」

「そんなとこ」

「やるじゃないか!」

「ここ、設定が激甘だからね」

「それでも凄い」


 なぜか褒められた。

 そして、ようやく帰路へ就く。

 久しぶりに気持ち良く遊べた。愛夏と過ごせて本当に良かったと実感できた。あの笑顔がまた見たいな。


 当の本人は疲れているのか後部座席の方で横になって寝ていた。



 ◆



 家に到着。

 じっちゃんと別れ、家の中へ入った。

 ゲーセンでゲットした景品を適当な場所に置き、俺は晩飯の準備を進めていく。


「あ、お兄ちゃん。ご飯なら、わたしがやるよ~?」

「たまには俺に任せておけ。愛夏は風呂なり、好きにするといい」

「でも~」

「いつも愛夏に作ってもらってばかりだし、たまにはね」

「分かった。お兄ちゃんの料理楽しみ」


 料理っていうか、ほとんど冷凍なんだけどね。

 愛夏はお風呂へ行ったようだ。

 俺はその間に冷凍をチンしていく。


 チャーハンにシューマイ、冷凍ラーメンも解凍。

 これで苦労せず中華セットの出来上がり。


 完成した頃には愛夏が戻って…………こない。


 まだ風呂かな。

 愛夏は長風呂だから、もう少し待つか。


 十分、ニ十分と待ったが愛夏が戻ってくる気配がなかった。さすがに心配になってきた。


 様子を見ようと浴室へ向かう。

 扉は閉まっている。

 悪いと思いながらも俺は扉を開けた。


 脱衣所には、まだ愛夏の服や下着が残っていた。……まだいるってことか。


「おーい、愛夏。大丈夫か?」

「…………」


 声を掛けるも、愛夏の反応はなし。

 おいおい、まて。

 いくらなんでもおかしいだろッ!


 緊急事態も予想されるので、俺は怒られるのを覚悟で扉を開けた。



 すると。



 浴槽の中でぐったりしている愛夏の姿があった。



「愛夏!!」

「…………」


「な、なんでこんなことに!」


「…………はぅ。お兄ちゃん、ごめん……寝てた」

「へ?」

「て、て、ていうか、なんでお風呂に入ってきてるのー!!」



 一瞬で顔を真っ赤にする愛夏。って、寝てたんかーい!! のぼせたとかでもなく、単に寝ていたらしい。


 まぎらわしいな!


「一時間ほど待っても戻ってこないから心配だったんだぞ」

「うぅ、ごめん。ちょっと寝不足だったから……ホント、寝てただけだから……!」


 妙に慌てる愛夏。

 む……なにか小さなモノを両手で隠しているような。気のせいか?


「そうだったのか。それで車でも眠っていたのか」

「うん。――って、お兄ちゃん! いつまでお風呂にいるの!!」


 湯気で肝心な部分はギリギリ見えなかったが、ボディのラインはハッキリと目に焼き付けた。……なんてヤラしい……じゃなくて成長しているんだ。


「すまん!」


 いろんな意味で俺は謝り、風呂を後にした。



 ――数分後、愛夏が風呂から上がった。



 頬を赤くして、そわそわしながら。

 俺も大変気まずいし、困ったことになった。

 固まっていると、愛夏はこう言った。



「……お兄ちゃんのえっち」

「勘違いとはいえ悪かった。逮捕されても文句は言えないな」

「ううん、わたしも気にしないで。ちょっと驚いちゃっただけだから」


 とりあえず、訴えられる心配はなさそうだ。

 安心したところで晩飯だ。


「そ、そか。じゃ、飯にすっか」

「うん。お腹ぺこぺこ」


 椅子に座り、晩飯をゆっくりと味わっていく。冷凍だけど美味いッ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る