第16話 義妹とラブホテルへ

 抱きつかれながらも俺は学校を出た。

 茜色に染まる空の中、校門を一歩出るとじっちゃんが現れた。今日も軽バンで登場だ。

 まるで狙ったかのようなタイミングだな。


「紗季、偶然だのぉ~」

「じっちゃん、ぜったい偶然じゃないだろ。待機していたのか?」

「たまたまだ。たまたま」


 まあいいか。おかげで楽して家へ帰れるし。


「乗せてくれる?」

「もちろんだ。愛夏もほれ」


 じっちゃんの軽バンに乗り込み、帰宅へ。


 だが、じっちゃんは家へ向かわず、別の方向へ車を向けた。



「あれ、じっちゃん。こっち家じゃないだろ。どこへ向かう気だ?」

「分かっとらんな、紗季は」

「え?」

「愛夏の顔に気分転換したいと書いてあるぞ」

「マジかよ」


 振り向いてみると、愛夏は頬を赤くしていた。……いや、分からんし。


「いいか、紗季。お前には愛夏を幸せにするという使命があるはずだ」

「そりゃ当然だ」

「なら畑仕事に青春を捧げている場合じゃなかろう! 愛夏の為に使ってやれ!」


 なんか怒られた。

 言われてみれば、最近は寄り道もしていない。家へ真っ直ぐ帰り、畑仕事をしてエロゲーして愛夏と過ごす。当たり前で変わらない毎日の生活だ。


 俺はそれで満足しているんだけどなぁ。


 そうか、愛夏はもっと何かしたかったんだ。


 そうだな、この高校生活も今だけだからな。

 もちろん、卒業しても変わりはしないと思う。でも、制服姿はこの時しか見られない。

 じっちゃんの言う通り、もう少し青春してもいいよな。


「分かったよ、じっちゃん」

「分かればいい」


 ニカッと笑うじっちゃんは、車を走らせた。

 十分ほど経つと建物が見えてきた。


「へえ、なんか派手な場所だな。お城だし」

「ラブホだ」


「「んなッ!?」」


 ってこれ、ラブホかよ!!

 てかこんなところに連れてくんなッ!!


「おい、ジジイ!!」

「ハッハッハ! 紗季、ここで愛を育め。愛夏とは義理なんだから問題ないだろ」


「ふざけんな!」

「けど、紗季。愛夏は興味津々だぞ」


 お城の方を見つめる愛夏。うわ、すっごく行きたそう。

 でも、正直結構興味ある。

 ラブホとか建物の中どうなっているんだろうなぁ。って、イカンでしょうが!

 もれなく補導されるわっ!


「ね、ねえ……お兄ちゃん」

「なんだ、愛夏」

「い、行く?」


「ば、ば、ば、ば、馬鹿!! 分かってるのか?! ここ、ラ、ラブホだぞ!」


「う、うん……。ちょっと興味ある、かも」


 あんのかいッ!

 けど入場は出来ないだろ。うん、無理。


「じっちゃん、他にしてくれ」

「……仕方ないのぅ」


 うわ、すごく嫌そう。

 まったく、エロジジイめ……!


 俺はじっちゃんを説得して、他の場所へ車を進めてもらった。頼むから、まともな場所にしてくれよ。

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