第2話 寝不足の義妹

『お兄ちゃん……お兄ちゃん……』



 砂糖菓子のような甘い声で俺は目覚めそうになった。


 まどろみ。曖昧な意識の中で切なそうな声が隣の部屋から漏れていた。


 ……愛夏の声?


 けど俺は日々の肉体労働のせいで、とにかく眠たかった。ここ最近、学校が終わって帰ると、じっちゃんの畑を手伝わされている。そのせいで疲れているんだ。


 二度寝して俺は再び夢の世界へ。


 ◆


 ――ピピッと音が耳元で響く。


 あぁ、もう朝か。


 目覚めて起きて俺は朝の仕度を進めていく。

 部屋を出るとちょうど愛夏が現れ、俺をみつめた。……なんだか顔が赤いな。しかも、ずいぶんと眠そうだ。



「愛夏、寝不足か?」

「……まあね」

「夜遅くまでなにをしているんだ。昨晩、なんか声が漏れていたけど」

「…………ッ!」


 そう聞くと、愛夏はビックリして背を向けて行ってしまった。……俺、なにか言ったっけ? あんな恥ずかしそうに去っていくとか、愛夏も年頃の女の子だからいろいろあるのかな。


 身支度を済ませ、俺は玄関へ向かう。

 学校へ行かねば。

 しばらく待つと制服姿の愛夏がやってきた。黒い髪をなびかせ、ぱっちりとした大きな瞳で俺を見つめる。……なんでそんな見るかな。



「どうした? 俺の顔になにかついてる?」

「ううん。お兄ちゃんはいつもカッコいいよ」

「な、なんだよ急に」

「別に」


 愛夏はローファーを履き、やっぱり俺をじっと見つめた。

 さすがに照れる。


 俺と愛夏は同じ十六歳。

 愛夏が義理の妹となって七年。この年頃になり愛夏はどんどん魅力的になっていった。可愛くて、清楚でダイヤモンドのように輝かしい。アイドルグループに所属していても違和感はないだろう。


 男だって速攻で出来てもおかしくない。……そんなことは兄として許さんが。でも、そんな気配はまったくといってなかった。


 愛夏はずっと俺の後ろをついてきた。


「行くか」

「う、うん」


 なんだかソワソワしている愛夏。なんだ、昨日から股のあたりを押さえるような動作が多くなったような?


 心なしか汗のようなものが。


 季節は夏。

 今日は暑いから蒸れる、とか?

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