第3話

 ————何も…手掛かりはないのかしら…


 そろそろ調査も行き詰って、諦めかけた。


 ただ、香澄のことを思うと「そんなことはできない」と、調査を強制的にやらせてくる自分がいる。


          嘘だ。


 ただの自分の好奇心、知識欲。それだけ。


 事実、彼女と過ごしたときより、あの烏を追っているときの方が“楽しい”と感じている自分もいる。


 心の中に罪悪感がもやもやと渦巻いて、でも償いのためにやめ…


 ……はぁ、また言い訳が始まった。


 められないじゃなくて止めたくない。それが本音だというのに。



 大学のフィールドワークで山に行ったときに、あの烏にまた出会った。


 今回は、辺りを見回したりせず、私の目をじっと見つめて去っていった。


 動画を撮ったが、やはり三本目の足は映ってくれない。


 ————そういえばアレの巣は何処どこにあるのかしら?


 三回見てそのどれもが(一回目は知らないが)どこかへ去っていった。


 さっそく私は撮った動画を観て、アレがどの方角に向かっているのかを調べて、直線を引き、交点を地図に描き表してみた。


 もう…そこに行くしかないので、行ってみることにする。


 手掛かりが何もない今、これくらいしかできない。


 そこは、特に変哲のない普通の住宅街だった。


 家が立ち並んでおり、別に活気がある訳でも、変に静寂に包まれている訳でもない。


 …ハズレだったかしら。次はどうしましょう。


 そんなことを考えていると、あの烏にまた出会った。電線に乗っていて、ただ群れにいず、一羽だけいる。


 こころなしか三本目の足が濃くなっている気がするが、如何いかんせんカメラにはそこだけ映らない。


 その烏は私の方ではなく、どこかに向かって、何度も何度も鳴いている、ように見えた。


 音がないので確証はないが、体と頭を前に突き出してくちばしを開ける様は、どう見ても鳴いているとしか言いようがない。


 ただ、“鳴いている”のだ。しかも“何度も”。


 そういえば香澄が烏の羽根になった瞬間ってあれが鳴いた時だったわ…


 もしかして、今誰かが烏の羽根になっているんじゃあ…⁉


 その烏はひとしきり鳴いたあと、とある家に向かって一直線で向かった。


 烏はその家の前でも鳴き続け、諦めたのかそのまま去っていく…ことはなく、なんとその家へ入っていった!


 ————あの家の人が…危ない‼

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