第一話 削り その1

「こんなもの、誰がやるんだろ…」


中学二年生の始業式、僕、篠原トオルは学校登校の前に自分の家に、不法に貼られた、バイトの求人に、腹立ちながら剥がした。


 内容は最近で日本の地下で新たに発見された、超有毒な未知のエネルギーの発掘上、及び取り扱い研究所からのものだった。


「眩しッ!」


そのポスターは全体的に明るい色を使っていたため、日光をよく反射し、それが突然僕の目を刺撃する。


春真っ盛り…その日は雲一つない、青空だった、僕の家は駅からは徒歩で10分の距離で、郊外付近とはいえ、そこそこの大都会の中にあった、しかし喧騒はなく、その周辺は非常にのどかで住心地の良い場所でもあった。



「トオルくーん おはー なに見てるの?」


「ん? わ!カナタ! いつからいたの? 急に背後に現れないでよ、びっくりするじゃん。」


「だってトオルくん全然話しかけても反応してくれないじゃん…変なチラシばっか見て」



僕は、求人ポスターに夢中で背後から声をかけられていることに、随分遅れて気付いた。


少し頬をワザとらしく膨らまして不機嫌にしている声の主は 『可米彼方カゴメ カナタ』という名前で、最近、近所に引っ越してきた僕の親友だった。


カナタは、正直僕と、どうしてここまで親密な関係になれたのか僕には未だに理解できなかった。

 

 というのも彼は、僕とは何もかもが、違う存在だったのだ。

 

 まず、その容姿に関しては、眉目秀麗、そんな言葉では収まらない、そもそもこの世のものとは、到底思えないほどの美貌を兼ね備えていた。 


 おまけに頭脳明晰でテストや成績はいつもトップクラス、運動神経もよく、本人は断っているが、それでもたびたび、いくつもの運動部にスカウトを受けていた。


 その点、僕は、学校の成績こそ彼にも負けたことは無かったが、それでもそれ以外は人並みで、所謂、平凡な生き方しかしてこなかった僕とカナタは本来、価値観や考え方も違うはず、 それでも彼は積極的に僕と関わり合ってくれて、今日まで仲良く寄り添ってもらっていた。


「そういえば、またクラス同じだね!」


笑顔で語りかけてくる。カナタの言葉に僕は違和感を覚えた。


「あれぇ そうだっけ? 確かこの前見たけど違ったはず… 僕は2組で、カナタは4組だろ?」


「もう ほら!! しっかりしてよ…ほら」


そう言って、少し怒りながら、カナタが僕にクラス分けの書類を手渡した。


その内容を見て僕は首をかしげる。



「あれぇ おかしいな…ほんとに四組だ…僕も…」


「新学期そうそう…ほら行くよ…もうすぐ電車きちゃう」


そう言ってカナタは、僕の手を引いて駅の改札へ駆け出した。

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砂夜の少年騎士団(ヴァルグランツ)の遺産 倉村 観 @doragonnn

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