15:カボチャは月にはなれない

「だからこそ、私たちは彼を撃ち落とさなくてはならないのですよ」

 視線を下に戻すといつの間にかカボチャが再集結していた。3段、4段に重なっていたり、電車の如く数珠繋ぎに連なって移動したりと、言葉にし辛いものがある。

 これがハムスターならば可愛いで片付けられるのだけれど、あの顔が掘り込まれたカボチャの集団なので正直名状し難い儀式の様相すら呈してきている。信奉者によって邪神に捧げられる生贄の気分というのはひょっとすると恐怖もだけど困惑の色も強いのかもしれないと、かなり現実逃避をしたくなった。もうね、あまりにあんまりで夢に出てきそう。いや、これ夢なのは分かっているけどさぁ……。

 俺なにかそんなに悪いことしましたかね? 降りかかる火の粉を払っただけのつもりなのですが?

「手伝ってください」

黒猫が器用に頭を下げていた。伏せとかではなく顔を地面に向けていた。

止めて貰えると本当に嬉しいのだけれど? 土下座は誰も幸せにならない訳だから。

 それはさておきとにもかくにも漸くだ。ここまで来るのにずいぶんと回り道を経たような気もするけれど。

 簡単に纏めてしまえば自分達以上にこの夢で動けそうな存在を招いて、その上で力試しをした。俺はそれに合格してしまった、という実に身も蓋もついでに鍋もない話。いやはや酷いオチだ。

 いや俺に関してはそれで済ませても、良くはないけど良いとして。他に巻き込まれた人たちは無事なんだろうか、俺は一人しか会っていないけれど。まあ、あの人ならば無事な気はする、根拠は全くないのだけれど。

「それは安心してください。失敗した時点で外に放り出しています」

 それはそれで安心出来ない酷い話じゃないかな? どう考えても悪夢の類でしかないのと、無事であるなら不問にせざる得ないと言うのも含めて、まったくもって本当に。

 更にどうしようもないのは、事ここに到っては最早断るって選択肢を選べないって事なのかもしれないけれど。

断ってしまえば、世界がどうなるかなんで正直誰にも分からない。世界が壊れたら、残骸を材料にして新しい世界が出来上がるなんて話もあるらしいけれど、仮にそうだとした所で俺達がいなければ世界は終わっているのと変わらない。

まあ、そう言う事なので。

断る理由はなく。

断れない理由はとても多い。まぁ、シンプルに纏めてしまえばたった1個なのかもしれないけれど。


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