7:アメとチョコ=ハロウィンキャンディ

 バラバラと小さなお菓子が降ってくる。大半は明後日の方向へ落ちていくけれど、幾つかは踏み板の上で災いを撒き散らしていく。

 ハロウィンキャンディは魔除けの意味もある筈なのだけれど、これじゃ全く意味合いが逆だ。『やめろ落ち着けんな物ばらまくな』と悪態をつく余裕もなく神経がごりごり削られながら階段を駆け上がる。当然そんな状態だと色々注意散漫になり、踏み板に開いた穴に足をとられてつんのめった。

 ハロウィンキャンディの雨は止まない。けれど、俺も踏み板に手をついたことでそれまでの勢いを失い、すぐに次の動きには移れない。

 いっその事、横に転がって落下するかとまで考えた。登り直しになるし、落下のダメージも無視できないが、緊急回避、体に穴が空くよりはよっぽど良い。

 ただ、前に倒れこんだ所為で上着も大きく捲れ上がり、ポケットに押し込まれていた小袋菓子の一部が零れて舞った。

 さて、それは偶然だったのか、必然だったのか。そんなことを思わず考えてしまう位に起きたことは劇的だ。

 溢れた小袋菓子が降ってくるハロウィンキャンディの雨を弾いた。初めから意図されていたかのように菓子同士がぶつかり合い俺を避けるように下へと落ちていく。

 それはハロウィンの菓子に込められた本来の加護が発露とでも言う代物だったのかもしれない。

 高崎真実の言っていたのが、この事だったのかは正直分からない。分からないが、とてつもなく有難い。掴み出したお菓子を空へばら蒔く。まるで結界でも張ったみたいにハロウィンキャンディの雨が遠のく。確かにこれは束の間の時間稼ぎ。けれど、それで十分。

 見上げ睨み付けた先では、未だに自由気ままに踊り、花咲か爺さんもかくやとばかりに、けれど災厄なハロウィンキャンディをばら蒔く魔女がいる。

 此方から見てだいたい二階層ほど上。一般的なビルの一階層は大体4メートルの高さなので狙えない距離じゃない。あとはまあ、あれだ。ここは夢の中、強く強く願い信じれば、大体はなんとかなる。

 なので、お菓子を握りしめ、揺れる三角帽子目掛けて投げつけた。因果は一切合切原因不明、けど投げたお菓子は光弾になって突き進む。

「いい加減迷惑だから、止めやがれ!!」

魔女の頭に命中した。

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