3:黒服のレディ
「はぁい、そこのファニーボーイ。一寸遊んでいかない?」
必死に影を追いかけていると、不意に声をかけられる。不意に現れたとも微妙に異なる、俺が声を認識したからそこにいると確定されたというなんとも曖昧極まる夢に相応しいポップアップ。
声の主も夢に相応しく混沌としていた。思わず足を止めてしまう位には。
「なにやってんですか?」
問いかけた相手は、大学のゼミで何度か顔を合わせた双子の
「はぁーい」
なんてにっこり笑顔で手を振っているが、格好はこの夢に相応しく黒無地のスーツ。黒服のコスプレといったところなのだろう。シワ1つないスーツ姿は凛としているが、女性らしい柔らかさも感じさせる為、凛々しさよりは愛らしさの方が強いだろう。
だったら、やっぱり俺の記憶で作られた高崎真実じゃないのか、ここは夢の中なのだし。と言いたい所なのだけれど、先の理由も込みでどうにもご本人ぽい。迷い込んだのだとすれば、このまま放置は些か不味い。普通人は自分の夢の外に出ることはない。つまり勝手に夢に戻ることもまずない。
たまーに傍迷惑な例外がいるにはいるが、それは滅多に起こらないからこそ例外と言う。
一番の心配事としての身バレは、忘れてもらう事で対処としよう。
「帰り道は分かりますか?」
ところがね。
問うて答えが返ってくれば話が一番早かったのだけれど、果たして返答はなんとも判断に困るものだった。
「ほらほら行くわよ。道案内が必要でしょう?」
一体何処へ連れて行こうというのか。有無を言わさず問答無用に腕を掴まれ引っ張られた。訳が分からず足を踏ん張って抵抗すると、その姿勢のままズルズル引き摺られる。え? いやちょっと待って! なにこの
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