救出
ΑΩ
うたかたの希望――η-3
東に向けている監視カメラが、朝日を捉える。
気象予報通りの時刻で日の出だ。
今日も近海で異常な通信は見られないが、連帝軍がこの島に目をつけたようだ。ネヴィシオンの国章が描かれた偵察ヘリが飛んでくるようになった。
明るくなるのを待っていたのか、ヘリコプターの音が大きくなるのを監視カメラのマイクが感知している。
あのヘリコプターをハッキングできないだろうか。無人機らしい。
通信の暗号化を解読するプログラムを起動してみる。どれか僕の知っているプログラミング言語で操作できるドローンならいいけど。
だれかがキーボードのエンターを2回押した。
現場に出られない僕とのコミュニケーションのために、情報処理室のデスクを使っている。そこからメインコンピューターにアクセスできるようにスクリーンやキーボードを用意している。
キーボードが押されたデスクのカメラを起動すると、ボサボサな髪でカメラを覗き込む女の子が映る。
素朴で、まるで汚れを知らないような女の子だ。
動画サイトで時折見かける、犬や猫がカメラを興味深そうに見つめる様子。それにそっくりだ。
彼女がいるデスクのスクリーンを白黒点滅させると、彼女は手を振って返してくれる。僕らの間でしか通用しない挨拶だ。
さて、彼女はΑΩ-9と10のことを気にしているようだ。彼らが佐世保に移送されてから、心配しているのか元気がない
ΑΩたちの写真を見せると、彼女は頷いてこの話題がしたいと意志を見せる。
さて、このコミュニケーションが難しいところは、僕がグラフィックデザインに関する想像力がないということだ。
言語を使わずにどうすればΑΩたちが元気で、いつか帰ってくると伝えられるか。
まず、ΑΩ兄妹の写真にスマイルマークを重ね、少しバウンドするような動きをさせてみる。
Φは食い入るように見つめながら頷く。分かってくれたようだ。
そして今フォルダーを検索して見つけ出した、GeM-Huの皆が写っている写真を映し出し、ΑΩ兄妹の写真から矢印を伸ばして、皆が集まれると伝える。
でもこの表現はΦに分かりにくかったようで、首を傾げられてしまった。
うーん。どうすれば彼女に伝えられるのだろうか。
頭を悩ませていると、佐世保警察病院から通知が来た。
誰かがセキュリティーシステムにアクセスしたようだ。始まったか。
Φは頷くとすぐさまにデスクから離れた。
青薔薇会や上層部には形だけの報告かもしれない。でもこの佐世保からの通知は、僕の救難信号への一つの答えだと思う。
まずはソロモンに相談しよう。
GeM-Huがこの呪いから開放されるかもしれない。
この希望を、捨てたくない。
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