第2話 第2の人生

 テンプレ的な異世界転生をすることになった普通のJKである私、ハルカ。しかし女神様から与えられた武器、全領域対応型兵装ナインウェポンにはとんでもない仕様があった。



「ちょちょっ!?ちょっと待ってッ!何それっ!」

 突如として聞かされた、各形態のロック解除方法。それは、私が女の子と、つまり同性とイチャイチャするという物だったっ!?思わず声を荒らげ、傍に居た女神様に歩み寄る。


「むふふ~♪テンプレ的な反応実に良いねぇ。見てて楽しいわぁ」

「そりゃそんないい笑顔浮かべてたらそうでしょうねっ!!」


 混乱する私を他所にウザイくらい良い笑みを浮かべる女神様ッ!クゥッ、あの笑顔を無性に殴りたいっ!でも今はそれ以上にっ!


「なんでこの武器、全領域対応型兵装ナインウェポンの、ロック解除の条件がそんな変なのなんですかっ!?」

「あら?強い武器が手に入って、合法的に可愛い子とイチャイチャ出来るのよ?嬉しくないの?」

「私が今どきの男子高校生とかだったら喜んだかもしれないですけど、私もっ!女ッ!なんですよっ!?」


 そりゃそんなハーレムプレイ、今どきの男子高校生だったら泣いて喜んだかもしれないけどさぁっ!私女の子なんですけどぉっ!?自然と女って部分にも力が籠っちゃったよっ!


「どうして女の私にそんな解除条件付きの武器なんて渡すんですかっ!?」

「ん~。理由を上げるとするならぁ。まぁぶっちゃけ私の趣味ねっ!」

「………はい?」

「いや~。私が最初に読んだ人間の漫画が百合系でさ~♪それを読んだら百合に嵌っちゃったのよねぇ。それでぇ、女の子がこの全領域対応型兵装ナインウェポンを持って転生すれば、百合なシーンが見られるって考えた訳よっ!」


 思い出を懐かしむように小さく笑みを浮かべながら語る女神様。……でもっ!今の私にはっ!そんなのっ!どうでも良いのっ!!

「いやそれで、なんで私の武器にそんな設定付けてるんですかっ!?」

 どうしてこんな機能が追加されたのか、私には皆目見当がつかなかった。だけど。


「ふっふっふっ」

「な、何ですか急に?」

 不意に、女神様が悪役みたいな笑い声を漏らし、ニヤリと笑みを浮かべている。な、何かとてつもなく嫌な予感がっ!?

「ねぇ、知ってる?神は全知全能なんだって」

「うぇ?な、何ですか急にっ。そりゃ、確かに神様って言う位だから、そういうイメージはありますけど。だから何だって言うんですかっ?」

 女神様の言いたい事が分からず、私は困惑していた。一体、どういう意味?


「まだ分からないかぁ。じゃあじゃあ、神様なら人一人の過去を閲覧するのくらい、訳ないって言っても分からない?」

「は?か、過去?それがなんだって……」


 そこまで言いかけた時、不意に私の脳裏によぎったそれは、誰も知らない『秘密』。そして更になぜか悪寒が体を駆け巡った。ブルッと体が震える。ま、まさか?

「ふふふ、その様子なら思い当たったようだねぇ?」

「えっ?えっ!?も、もしかしてっ!?」


 得意げな女神様の笑顔。そしてそれを見た瞬間、滅茶苦茶嫌な予感がしたっ!

 

「私は知ってるんだからねっ!人の子ハルカッ!あなたが小学生の時、学校からの帰り道で偶然百合系のエロ同人誌を拾って、人生初のエロ本に思わず興奮してそれを家に持ち帰った挙句、親や仲のいい友達にも秘密のままその同人誌をずっと隠し持って今も定期的に読み返してる事もねぇっ!!」

「いぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 なんて事知ってるのこの女神様っ!?

「ぷ、プライバシーの侵害ですっ!なに人の過去調べてるんですかっ!?」

「ふっふっふっ、言ったでしょ?神は全知全能なのよぉ」

「うぅっ!!」

 あ、あの得意げな顔はやっぱり殴りたいっ!!って言うか私の過去モロバレしてるしぃっ!うわ~~!恥ずかしさで顔が熱い~!


「あ、ちなみにその同人誌が夜のお供になってる事も知って……」

「このド変態エロ女神ィィッ!!!」


 な、何てことまで知ってるのっ!?もう女神とか関係ないっ!1発ぶん殴らないと気が済まないっ!!

「おっと?」

 がしかし女神はそれを軽やかに避けるっ!

「まぁまぁ落ち着いてよ~。ここにいるのは私とあなただけなんだからさぁ」

「これが落ち着けますかっ!?勝手にプライベート知られてたら誰だってキレますよっ!?」

「ごめんごめん。でもまぁ、実際『そういう本』で興奮してるって事は、あなたに百合に対する興味があるのは、間違いないでしょ?」

「うっ!そ、それは、まぁ……」


 怒っていたのも束の間。図星を言い当てられ、私は思わず言い淀み、2発目として構えていた拳も下がる。


 確かに女神様の言う通り、最近の私にはそっち系の趣味があった事は否定できない。女性同士の恋愛にも、興味がない訳じゃなかった。でも周りにそんな事を公言している子なんて居なかった。だからこれは、両親も知らない私だけの秘密だった。


「私だってそっちの気が無い女の子にこの武器を与える事なんかしないわよ。この全領域対応型兵装ナインウェポンをあなたに渡すのは、あなたに百合の気があったから。そして、あなたがこれを持って異世界に転生すれば、必然的にあなたは百合ハーレムを作る事になるわ」

「ゆ、百合ハーレム?」

「そうよ。……ここで、全領域対応型兵装ナインウェポンの話に戻りましょうか。この武器の封印された8つの形態。それを解除するためには女の子とイチャイチャして、相手の好感度をある程度まで上げれば良いの。ただし、1人の女の子で解除できるのは1形態だけ。つまり8つすべての形態の封印を解除するには、あなたは8人の女の子とイチャイチャするしかない、って訳」

「えぇ?」

 聞いてるだけでハードルの高さが伺い知れる。確かに百合に興味はあるけど、実際に誰かとそういう関係になった事なんて無い私に、8人とイチャイチャするなんて、ハードルが高すぎる。


「更に、例えばの話だけど。1人の女の子、仮にAちゃんとしましょうか。そのAちゃんと仲良くなって、形態の一つ、そうね。適当に剣形態ソードモードの封印を解除したとしましょう。けれど、何らかの理由でAちゃんの好感度が下がると、解除された封印が再び発動する仕組みになってるから、ここも気を付けてね」

「え、えぇっ!?き、気を付けてねってっ!?そ、それってつまり私に8股して、しかも8人全員と関係を維持しろって事ですかっ!?」

「まぁそうなるわね」

「そうなるわね、って何を呑気に言ってるんですかっ!?恋愛経験すらまともに無い私にハーレムの維持なんて無理ですよっ!?」


 恋愛経験0からハーレムを作れなんて、修羅の道過ぎないっ!?出来る自信が全く湧いてこないんだけどっ!

「残念ながらこれは決定事項なので~すっ!」

「はっ!?えっ!?はぁっ!?」

 勝ち誇ったかのような笑みを浮かべる女神様っ!ってそれよりっ!決定事項って何っ!?えっ!?もしかしてっ!?

「もしかして私の転生特典って、この全領域対応型兵装ナインウェポンで決まってるって事ですかっ!?」

「その通りで~すっ!既にあなたの転生特典は決まっていて変更は出来ませんっ!あしからずっ!」

「いやいやいや、納得できないんですけどっ!?そりゃこの武器は強そうだなぁとは思いますけどっ!それにしたってこんな条件じゃっ!同性の恋人が出来ないなら9個も形態があったって意味がないじゃないですかっ!」


 武器を使いこなす以前に、9個すべての形態の封印を解ける自信が無かった。だって無理だよ8人も同性侍らせてハーレム作るのなんて。ギャルゲーの主人公だってそんな数の女の子侍らせてないってっ!


「あのねぇ。一応言っておくけどこの全領域対応型兵装ナインウェポンは、転生特典としては最高クラスの武器なのよ?」

「えっ?」


 女神様は私に向かってやれやれ、と言いたげな表情と共にため息交じりにそう漏らした。え?で、でもこんな変な武器が、最高クラスなの?

「そうよ」

 って、また心を読まれた。女神様は静かに頷いた。


「良い?転生特典って簡単に言うけどね、そう何でもかんでも与えられる訳じゃないの。下手に力を与えすぎて、それこそ魔王みたいになられても困るからね」

「た、確かに」

「だから与える力にも制限があるの。一応言っておくけど、この武器は万能なのよ?近距離から遠距離まで、どの距離でも力を発揮できるし、杖形態ロッドモードは魔法も使える。更に魔法にも怪我の治療とか、極めれば制限付きだけど死者蘇生とか、不治の病の治療だって出来る優れものなのよ?」

「えっ!?そ、そんなに凄い力まであるんですかっ!?」

「そうなの。どう?これだけ凄い力があるのに、それでも不満?」

「………」


 死者蘇生の話や、最高クラスの力を持つ武器である事を聞いた私は戸惑った。た、確かにそれくらいできるのなら、形態の封印解除の条件も、まだマシな方なんじゃないかと思えてきた。


 確かに封印解除の条件は、楽な物じゃない。でもそれだけ凄い力が使えるのなら……。この武器を手にして転生するのも、『アリ』なんじゃないかと思えてきた。


「ふふふっ」

 すると女神様はそんな私の心の中を読んだのか笑みを浮かべた。多分、揺れ動く私の意思を読んで楽しんでいるんだ。あぁもう、ホントあのニヤニヤした顔は1発くらい殴っておきたいけど、今はそれよりも考えないとっ!



「あの、女神様、少し聞いても良いですか?」

「何?」

「私の転生特典はこの武器で決まっていて、変更できないんですよね?」

「えぇ」

「じゃあこの全領域対応型兵装ナインウェポンの形態の封印解除の条件を、変更する事も不可能ですか?」

「えぇ」

「この全領域対応型兵装ナインウェポンは、私が貰える武器の中でも最高クラス、なんですよね?」

「そうよ。確かに他にも強い武器はある。……けどね、この武器は全領域対応型ってだけあって、あらゆる状況に対応できるの。銃を模した形態による遠距離攻撃や弾幕射撃による制圧。超長距離からの狙撃。逆に剣や槍を模した形態なら、近距離での圧倒的な破壊力。更に盾形態シールドモードの圧倒的な防御力。杖形態ロッドモードの魔法のレパートリーも豊富で、通常の攻撃技から破壊力の高い大技、味方へのバフ、敵へのデバフ魔法はもちろん、回復なんかも出来る万能性。改めて言うけど、こんなに様々な力を持つ特典って他にないのよ?」

「………全領域対応型、って言う名前は伊達じゃないって事ですね」

 

 女神様の説明を聞いてれば分かる。この武器の持つ力は凄まじい。万能、と言っても良いんじゃないかって気がしてきた。そして私にはそれ以外の選択肢がそもそもない、と。正直、私が女の子と仲良くなってイチャイチャ出来るかなんて分からない。けどこれしかないのならっ!


 そう思いつつ女神様の様子を伺うと、ニヤニヤと楽しそうに笑みを浮かべてた。多分私の心を読んでるなぁあの顔。クソゥッ、あのわっるい笑みを浮かべてる顔をぶん殴りたいけど、どうせまた避けられるしなぁ。


 あぁもう、仕方ないっ!こうなったらヤケクソだよっ!どうせ凄い力を貰えるのなら、それに越した事はないしっ!!

「おっ?どうやら腹は決まった、って所かしらねぇ?」

「えぇっ!決まりましたともっ!どうせこれしか貰えないって言うのなら、貰ってやりますよっ!どうせ百合とか百合ハーレムに興味あったのは事実ですしっ!」


 ここまで来たらホントにヤケクソ。女神の掌の上で転がされる気分だけど仕方ないっ!

「この武器、全領域対応型兵装ナインウェポンは、貰って行きますからねっ!!」

「良いわよ」

 ヤケクソ気味に、宙に浮いていた拳銃形態ハンドガンモード全領域対応型兵装ナインウェポンのグリップを掴み、手に取った。


「ッ!」

 と、その時。不意に手にした全領域対応型兵装ナインウェポンから、掌を通して何かが体の中に入り込んでくるような感覚がっ。何かが、頭の中に入って来る。これ、って。この武器の情報だっ!


 数秒もすれば、情報が頭の中に全てインストールされる。

「これ、って」

「あなたの中に知識をインストールしたのよ。これであなたはこの武器の扱い方を感覚的に理解したはずよ。どう?」

「………」


 確かに、女神様の言う通り『分かる』。武器の扱い方とか、色んな事が感覚的に理解できた。

「はい、確かに分かります。この力の使い方とか、銃関係の形態の時の操作の仕方とか。自然と分かります」

「よろしい。無事に知識のインストールが出来たみたいね。そしてそれはつまり、その全領域対応型兵装ナインウェポンが人の子ハルカの武器として正式に登録された事でもあるわ」

「……」


 これでこの武器は正真正銘私の物。思わず私は視線を、右手に持った拳銃形態ハンドガンモード全領域対応型兵装ナインウェポンへ向けた。


「さて、これで転生特典の登録も終わったし、改めて異世界について簡単にレクチャーするわね」

「ッ、お願いします」

 女神様の言葉で視線を手元の全領域対応型兵装ナインウェポンから女神様に移す。


「あなた、ハルカが転生する世界は王道のファンタジー世界よ。文明レベルは中世の頃が近い、と言えばいいかしら。ただし中世の地球と比較するといくつか相違点があるわ。その1、『魔法』が存在している事。また、魔法から派生した道具として『魔道具』の存在とそれを開発する人たちがいる事。その2、魔物と呼ばれるモンスターの存在。こいつらは基本的に他の生命とは相いれない存在よ。まぁファンタジーゲームでド定番の敵キャラ、って言えば想像がつくでしょ?」

「はい」


 話を聞いている限りだと、私が呼んだ事のあるファンタジーな世界観のラノベと大差ない。

「その3、世界地理は地球とは全くの別物。そして世界各地にある国家は基本的に王政。つまりファンタジーゲームでお馴染みの王様や貴族が存在する国って覚えておけば良いわね。まぁすべての国が王政国家って訳じゃないから、その辺りはぜひ自分の目で見て確かめてね」

「はいっ」


「次、その4。冒険者の存在。これはまぁラノベでよくある冒険者と変わらないわ。ギルドに登録し、依頼を受注してこなし、成功すれば報酬を貰う。まぁありふれたタイプの冒険者ね。あぁちなみに、ハルカには全領域対応型兵装ナインウェポンって言う戦闘向きの特典を与えた訳だけど、もしあなたがどこかの国の騎士団や軍に所属しようと考えているのなら、オススメはしないわ」

「え?どういうことですか?」


「軍や騎士団は、現代で言う国軍や警察ね。だから当然戦闘系の武器や能力があれば、活躍できるし出世も期待できる。でもそう言った所は男社会だから女性との出会いも少なくて、形態の解放が難しくなる。それにこの世界じゃ軍や騎士団なんてまだまだ男社会だから、女性のハルカが入っても浮くし、下手をすると目を付けられる恐れもある。規律とかもあって女性とイチャイチャ出来る可能性も少ないから、あまりお勧めしないわね」

「な、成程」


 言われて確かに、と思った。あぁ言うところってルールとか上官の命令は絶対ってのがよくありそう。アニメとか見てると、無能な上司とか上官のせいで苦労するキャラとかいるし。上官の命令は絶対、みたいな所は嫌だなぁ。どんなのが上司になるか分からないし。


「とはいえ、これからの第2の人生をどう生きるかは人の子ハルカ。あなた次第よ。私はあなたの選択を尊重するわ」

「女神様」

 優しい笑みを浮かべる女神様に、一瞬頬が緩んだ。が……。


「まぁ女の子同士でイチャイチャラブラブしてくれれば私はオールオッケーだしぃっ!」

「ってアンタはやっぱりそれが目的かっ!?」

 いい笑顔だなぁ女神様っ!1秒前の私の感動を返せっ!


「ごめんごめん。あぁそうそう。謝罪の代わりって訳じゃないけど。特別にハルカ、あなたには転生後も私と念話、つまりテレパシーで会話する事が出来るよう、取り計らっておいたから」

「え?ど、どういう意味ですかそれっ?」

「簡単よ。異世界転生後も私と話が出来るって訳。全領域対応型兵装ナインウェポンを中継器として、ね。そうすれば私の方からアドバイスもしたり出来るでしょ?」

「確かに、それはまぁありがたいですけど。でも良いんですか?神が1人の人間に肩入れするような事をして?」

「別に大した問題じゃないわ。それに、肩入れすると言っても相談に乗るが関の山よ?流石にピンチになったからって『女神パワーでお助けっ!』、とかは出来ないから。気を付けてね」

「あ、そうなんですね」


 つまり女神様とただ話が出来るだけ、って事か。まぁでもアドバイスをくれるって言うのなら、ありがたい。右も左も分からない異世界だもん。話しくらいしか出来なくたって、1人じゃないのなら少しは安心できるかも。


「さて、これで武器の登録と、粗方の説明は終わりね。後の細かい話は『現地』でしましょうか?」

「ッ!」


 現地で、という言葉に思わず息を飲んだ。それはつまり、異世界で、という事だ。い、いよいよ転生するんだ。緊張してきたなぁ。


「ふふ、それじゃあ、ゲートを開きましょう」

 女神様は緊張する私を見つめ笑みを浮かべながら、指揮棒のように指先を振るった。


 すると私の前に、虹色に光り輝くトンネルが現れた。

「これ、は?」

「ゲートよ。異世界へ転生するための、ね」

 女神様は私の隣に立ち、そしてゲートの入り口を指さす。


「ここを越えた先に、あなたの第2の人生が待っているわ」

「第2の、人生」


 その言葉に私は固唾を飲んだ。緊張と不安、期待で喉がカラカラだったから。モンスターへの恐れはある。未知なる世界への不安はある。そしてそれと同じくらい、異世界への期待がある。


 だからこそ、私は足を踏み出した。1歩、1歩、確かにゲートに向かって歩みを進める。そして、私は虹色のトンネルの中へと足を踏み入れた。ただひたすら、トンネルの中を進んでいくと、前方にまばゆい光が現れた。その眩しさに目を背けながらも、その光に向かって進んだ。。


 光に向かって1歩、1歩、確実に歩みを進める。その時。


「人の子ハルカ。これからあなたの旅が始まるのです」

 聞こえる、女神様の声。あの女神様は百合好きな変態かもしれないけれど、今聞こえる声だけは、母性と優しさに満ち溢れた、女神に相応しい優しい言葉だ。


 その言葉は私の中に合った不安や緊張を溶かしていく。だからこそ、光に近づくにつれ、薄れ行く意識の中でも足を前に進めることが出来た。


 ただ……。


「あなたの旅に、数多の百合が訪れん事を」


 最後の祝福の言葉が、何とも締まらなかった。そこはせめて『幸福』って言ってほしかったなぁ。


 なんてことを考えながら、私は一度、意識を手放した。





「はっ!?!?」


 そして次の瞬間。私は見知らぬ平原の上にポツリと立つ、1本の木の根元で目覚めた。


 これが、私の第2の人生の始まり。そして私が百合ハーレムを作るために奮闘しながら色々な場所を旅したり、事件に巻き込まれたりする物語の、始まりだった。



     第2話 END

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