ドラフト当日 下

「それでは抽選に入ります。まずは楠木葵さんからです」


 京子達が舞台から降りると、目の前に2つの白い箱が運ばれてきた。

 この中には抽選のくじが入っている。

 くじには2種類あり、あたりくじには指名した生徒の名前が記載されているらしい。

 もっとも、京子は今回がはじめてのドラフト参加であるため、あたりくじを見たことはないが。


「山本先生から箱の中にあるくじを引いてください。お二人が引き終わった後、開封に移ります」


 校長の指示があり、山本がおもむろに箱へ右手を入れる。

 そして数秒経過した後、くじを取り出した。


「......」


 続いて岡田が左手を箱に入れる。

 彼女の顔がこわばっている。

 まだ楠木が競合した事実を受け入れることができていないようだ。

 

「お二人とも、くじを引きましたね?」


 校長の問いかけに山本と岡田は頷く。

 

「それでは開けてください」


 二人がくじを開く。

 そして、喜びを表したのは。


「来た.......!」


 岡田であった。

 普段はおとなしい彼女が喜びの感情を全面に出している。

 ガッツポーズが止まらない。

 それだけこの抽選にかけていたのだろう。


「まじかぁ......」


 一方の山本も残念そうに苦笑いを浮かべている。

 しかしそこまで落ち込んだ様子ではない。

 彼にとってはもう一人、清水という本命がいるからであろう。

 そちらへ気持ちを切り替えているようだ。


「おめでとうございます。楠木葵さんの指名権は2年2組が獲得しました。1組は再入札となります。それでは席にお戻りください」


(次は私達ね)


 抽選箱の前へ移動し、ちらりと隣の佐藤を見る。

 いつもと変わらず仏頂面だ。

 何を考えているのかわからない。


「続いて田中和樹さんの抽選を行います。それでは佐藤先生からくじを引いてください」


 校長のアナウンスの後、佐藤の右手が箱に入っていく。

 そしてすぐに引き出される。

 迷うことなく、上にあったくじを引いたようであった。


「秋元先生、お願いいたします」


 京子も箱へ歩み寄り、利き腕である右手を入れる。

 とはいえ、彼女に選択肢は残されていない。

 箱に残っているくじを引くだけである。


「お二人とも引き終わりましたね?それでは開けてください」


 京子はくじに手をかける。

 泣いても笑っても、このくじの結果でクラス替えが大きく変わる。

 彼女は目をつむりながら、くじを開く。


(お願い!引かせて!)


 天に祈りながら、ゆっくりと目を開く。

 そして、彼女は言葉を失ったのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜

 ここまでご覧いただきましてありがとうございました。

 次回最終回です。

 少しでも面白かったら、ぜひ♡や★、コメントをいただけると嬉しいです!

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