第6話 借りた武器ってお金掛かるんですか!?

 あの後事後処理(モンスターの死骸を焼いたりギルド報告用の戦利品を回収したり)をして、村に帰還すると両手をあげて歓迎されました。ちゃんとお風呂にも入れて万々歳です。


 少しだけ仮眠をとってギルドに帰ると、驚きの声と共に歓迎されました。悪い気はしないですねぇえへへ。


「よくやったな。これが今回の報酬だ」


 ウォルターさんからねぎらいの言葉もかけてもらい、さて報酬と確認すると、あれ?なんだか聞いていたより少し、いやだいぶ少ないんですが……


「まず内訳な。報酬が金貨20枚。ここからギルドの取り分が4枚。壊した武器と使った矢の本数の補填が10枚。で、お前の取り分がそれだ」

「そ、それにしても頑張ったんですし、6枚はあんまりじゃないですか……?せめて金貨10枚とか、もしくは狩ったモンスターの数だけ上乗せとか」

「今回の依頼内容をよく読め。モンスターを『追い払ってくれ』だぞ。殲滅じゃない。村も裕福じゃないし、プラスして金を出してくれるような余裕はないだろうからな」

「そ、そんなぁー!」


 まだまだ、パン屋でのアルバイトは続きそうです……





 ウォルターは内心ガッツポーズをしていた。彼の腹積りでは、無傷で依頼達成くらいはやってくれるだろうと踏んでいたが、それにしても『30体以上いたモンスターの殲滅』『オークの様なBランクのモンスターの単独討伐』まで出来るとは思ってもいなかったからだ。これは星の輝きに限らず、一握りの人間しか出来ない偉業である。

 そしてこう言った噂は流れるのが早い。大きなうねりを生じるのは、まず間違い無いからである。



 ウォルターの見立て通り、村から村へ、そして街へ国へと噂は伝播していった。

 曰く「星の輝きの新人が、無傷で30体以上を殲滅した」「オークすらも一刀両断した」「雲を突くような大男だ」「いやいや俊敏な動きで粉々にした」などと、話が雪だるまのように大きくなったのである。


 事実確認に何人も村に訪れたが、村おこしに躍起な村人により洞窟は「新人冒険者様活躍の地」として観光名所になっており、噂以上の伝記が伝えられ、なんなら短い髪かつ小柄で体の起伏も少ないロディを「男」と勘違いした村人たちが立派な像を拵えていた為事実確認は困難を極めた。

 一応その場の戦闘の後や、倒されたオークの死骸(もっとも、焼けてしまって斬り殺されたまでしか確認できなかったが)からここで何が起こったかは判別できたものの、本当に新人がやったかは甚だ疑問の残るものである。


 となると、次に人が向かうのは星の輝きである。彼らの公式声明を要約すると「噂は一部事実であるが、公表は控える。それよりうちのトップランカーたちは新人以上に活躍するからお仕事どうですかー」とのことであった。これはウォルターの策であり、ロディに悪意が向かないようにすることと、引き抜きの防止、ついでに星の輝きの宣伝も兼ねたものである。


 かくしてロディはそう言った水面下のことを一切知らないまま、パン屋でのアルバイトに精を出すのであった。

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