第5話 決戦。
仕事の準備は順調に進み、後は決行だけになりました。
弓を引き、強弓の第一界技≪射撃≫で一体、また一体と脳天を打ち抜きます。声など出させません、バレたら作戦を別のプランに変えなければいけなくなっちゃいますし、そっちは私としてもあんまりよろしくないので。
「これで、最後っ」
「ギッ…」
日が昇る少し前に見張りを首尾よく倒し、その入り口を一つだけ残して村人たちに火を放ってもらいます。空気穴に煙は進んでいきますが、煙を全て換気するにはいささか足りず、むしろ火を洞窟の奥へ奥へと押しやっていきます。
無事な出口は一つだけ、となるとそこに殺到するのは自明の理。半狂乱になって逃げてくるゴブリンたちを
「ええ、お待ちしていましたよっ!」
強弓の第二界技≪強射出≫で一気に倒していきます。ゴブリンの骨ごと貫通し、その後ろまで届く強力なもの。一射で殺せるのは6体、聖騎士の精鋭ならもっと倒せるのでしょうが、まぁ仕方ないですね。此処は私の技術不足と割り切ります。
「二十九!三十!」
敵の量が半分を切ったあたりでこちらの弓も打ち止め。遠距離の攻撃がないとわかり殺到してきたゴブリンたちの目を、後ろから射した太陽光が焼きました。暗闇に慣れた目になった彼らには今、私が全く見えていないはずです。ここまでは予定通り。あとはアドリブでどこまで行けるかですね。
こちらも剣と盾を抜き、≪身体強化≫で距離を詰めます。適宜発動した≪光の剣≫で洞窟から出すことなくどんどん切っていきます。
光の剣の効果を簡単に言えば『どんな武器にも付与でき、防御を無視して攻撃できる』というもの。そのぶん武器の耐久力は急速に減っていきますが、まぁそこは致し方ないですね。切る直前に発動することで剣の耐久度合いを長持ちさせます。どんどん血の海が広がって、私の体も血で染まったころにやっとゴブリンの殲滅が完了しました。
「さて、残るは中にいる大物だけ、ですね」
大きな足音に、剣を握る力が一層強くなります。
やはり、中から出てきたのはオークでした。甘く見積もらなくて正解です。どこから手に入れたのか、大きな斧を手にこちらへ向かってきました。剣の耐久は気になるところですが、悩んでも仕方がないので突貫します。
≪光の剣≫は防御こそ無視できますが、武器の耐久値までは無視してくれません。オークの斧をバターのように切れるということは全くないということです。そういうのはもっといい剣が必要になるんですけど、借り物の剣ですし期待しないでおきましょうか。そうして一合、二合と切り結ぶうちに、
「もうだめになっちゃいますか!」
剣が折れてしまいました。こうなるともうこの剣に≪光の剣≫は使えません。心なしかオークの顔が笑ったような気がしました。
が、こちらとしてもまだ想定の範囲内。せめてゴブリンたちが武装して出てきてくれればもう少し楽だったかもしれませんが、そういったものは落ちていない。ならオークの武器を奪いましょう。
細かな攻撃をことごとく盾でいなされたことに業を煮やしたオークが、大ぶりの一撃を撃とうと大きく振りかぶる。そうですよね、それしかあなたには手がない。
この状況を待っていました。振り下ろしの瞬間にぎりぎりで横に避け、オークの手首に盾での≪強撃≫。オークの手から斧があらぬ方向にすっぽ抜けていきます。
私がこれを追うと、オークもそれに負けじと追従してきます。オークの手が斧に届くその瞬間、かがんだ状態のオークの顎へ、盾を砕くほどの≪強撃≫おまけに≪光の剣≫も上乗せしました。想定外の一撃に顎を揺らしたオークは数舜動きを止めますが、その隙はあまりにも命とりです。
「これで、おしまい、です!」
悠々とオークの斧を拾い、≪強撃≫と≪光の剣≫を顔面にたたきつけることで、オークの生命活動は完全に停止することになりました。
いやぁ、まぁ、格好はつきませんけどなんとかなりましたね。武器も防具も全部使って、何なら敵の武器すら奪ってこの戦果。初めてにしては、上々じゃあないんですかね?
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