第2話 2200年の日本

 2100年、何度目かわからないが、世界を巻き込んだ戦争が発生した。この戦いに、当然のように日本も巻き込まれることになった。

 日本はその戦いを生き残ることはできたが、残念ながら無事とは言うことができなかった。日本はとある技術を開発したことにより、人員不足を脱却することはできたが、資金と資材という問題を抱えていた。その二つを解決するために、諸外国に助けを求めた結果、日本は傀儡の国と化してしまった。

 

 日本に起こった悲劇は、それだけではなかった。戦争で勝つために作成した機械兵が、そのアルゴリズムにバグを生じてしまい、今度は自分たちに牙をむくようになったしまったのだ。

 機械兵たちは、工場で自動生成され、リペア、修理を行うことができる。当然、工場は無人で稼働することができ、故障した機械兵を回収することで、素材の回収もできるから、機械兵の数が減ることは基本的にない。機械兵のプログラムは、人間を見つけたら殺すことのみであり、そこに敵味方の識別信号はない。そのため、日本人であろうとも機械兵に見つかれば即座に銃殺されるか、切り殺されるというのが現実である。


 本来であれば機械兵は戦地に投入され、陸軍の最終兵器となる予定であった。実際に敵に送り込まれ、機械兵はそれはもう素晴らしい戦果を挙げることに成功したのだが、戦争が終結するころに工場が暴走。工場出荷時で既に殺戮プログラムがONになっており、これによって約2000万人もの日本人が、一日にして死んだ。すぐさま対策を打ったが、工場の防衛設備は万全であり、地上戦力は当たり前だが、対空戦闘も万全であり、航空戦力も通用しない。10年ほど各国の支援の下戦いを続けたが、終ぞその防御を突破することはできず、結局は城塞都市を構築して引きこもることになる。


 こうして、お金のある日本人と外国人は城塞都市内部に。お金のない日本人は、城塞都市の外側にスラム街を形成して生活をしている。城塞都市内部には、衛兵もいるし治安もある程度は安定している。

 城塞都市内部にもいくつかの階層があり、上位から順番に、統治層、裕福層、一般層、下級層に分かれている。統治層には、日本人はおらず、裕福層であってもそこに暮らす日本人は国の主要人物の中の一握りだ。


 一方で、スラムは無法都市である。暴行や窃盗なんて当たり前。殺人が起こったとしても、誰も咎めることはない。むしろ、殺人が起これば空き家ができる、死んだ人間のお金が入るということで、むしろ歓迎ムードすらある。スラムの危険性は、城塞都市内部の人間に「行くなら死を覚悟しろ」と言われている。


 そんなスラム街に、一人の少年と三人の少女が暮らしていた。


「瀬名様、今日は何をしますか?」

「昨日仕事したから、今日は寝てるよ」

「そうですか、では私は添い寝しますね」

「え?」

「じゃあ、私が反対側に行くとします」

「ええ?じゃ、じゃあ私は瀬名様の下に!」

「それは寝心地が悪そうだね」


 これは、スラムに暮らす一人の少年と、城塞都市内部に暮らす一人の少女の物語だ。

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