第85話



 隊長機を失った月からの攻撃隊は、統制を失った編隊となった。

今、月の編隊は囲まれている。

前方にはクロウ海賊船迎撃機フォー1、左右にはフォー2、フォー3が付いており、後方には二人乗り迎撃機ハァー1が飛んでいる。

つまり、この状態では手も足も出せない。


 先頭を飛ぶフォー1は、真っ直ぐに月へと誘導している。

先頭の迎撃機フォー1に攻撃を仕掛けようものなら、左右後方からの一斉射撃で月の攻撃隊、警備艇は一瞬にして壊滅する。

パイロットたちは、自分達は囚われの身であると感じている。


 それを眺めている月での司令塔では、総督ドローが苦渋の顔で何かを言おうとしている。

それを感じた側近が声を掛ける、


「総督?」


「レプトン砲だ」


「え?」


「レプトン砲で奴らを叩け」


「それでは、味方のパイロット達が」


「パイロットなら、他にも居る。ボルグには呆れさせらたものだ。海賊船も今は、ジゼル総督によって宇宙のデブリになっているはず。武器ならジゼル総督から買えば良い。月には移住計画を進めた企業からの献金が十分すぎるほどある。あとは海賊どもを始末するだけだ。連中を片付ければ地球植民地計画は此方のもの」


「それでは・・・、了解しました。レプトン粒子の充填を命令します」


 そうとも知らずにフォー1に乗る隊長ルイスは、悠々と月へ敵機を誘導している。


「フォー2よりフォー1へ、素粒子エネルギーを確認。エネルギー充填位置月砲台、充填し始めたばかりのようでエネルキーレベルはレベル1以下です」


「何だとー、こっちは月からの攻撃隊を無事に返してやろうとしているのに、奴らは皆殺しを狙ってるってかい」


 とルイスが答えると、


「フォー1へ、エネルギーレベル上昇中」


「この距離だったら間違いなく全員あの世行きだ」


「か、と言って」


「そうだよ、奴らを放っぽり出して逃げるには、ちと無情じゃないかい?」


「そうは言うものの」


「分かってらい」


「レプトン粒子レベル2まで充填を確認」


「どうすりゃ良いんだよ」


 ルイスの声は、殆ど絶叫に近くなっている。


「レベル3、砲門が開かれるのは間近です」


 その時、彼らの前を塞ぐように海賊船が現れた。

素粒子分解幕を張っているのがわかる。


「ルイス、全機を左舷に急速旋回させろ」


「助かったぜ、クロウ」


 続いてルイスが指令する、


「全機に告ぐ、敵戦闘機を左舷に誘導しろ」


「了解」


「おい、クロウ、俺たちは、また吹っ飛ばされなきゃならないのかい」


 海賊船内で笑いながら船長に語りかけたのはウイス副長である。

その後に続いて通信士のレイが報告する、


「砲門、開かれました」


 その直後に再度海賊船が吹き飛ばされた。

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