第79話



 この戦いの合間にも月調査団の調査は続いていた。

戦闘下では横穴の近隣に建てられたコロニーに避難していたが、戦いが終わると見ると彼らは動き出した。


 元々、超素粒子変換装置を使うのではなく、セクターから運ばれた充電器によって作業が進められていたので、海賊船からのヒッグス砲での影響はなかった。

ただ、ヒッグス砲によって揺さぶられ塞がれた横穴を掘り起こすことから始めなければならなかった。

崩れ落ちて何もかもが土の中に埋まってしまった今、遠慮することはない。

大型の重機が動き出し一気に掘り起こし始めた。

目標は、小型超素粒子変換装置の下に隠されていた地下への階段であった。


 そして彼等は、僅か数時間で階下へと辿り着いた。

辿り着いたその場で、今度は調査団員たちが手作業で掘り起こし始めた。

そこに有ったのは小さな部屋で、通路は地下を潜ってあらゆる場所へと繋がっているのではないかと思われた。


 今や、彼等は戦争に明け暮れようとしているセクター1とは、全く別の独立行動を始めている。

そうしなければならなかった。

あらゆるセクターのコンピューターがハッキングされ、正常な働きをなくしている最中であったのだから。


 完全に崩れさってはいない地下道を、さらに手作業で掘り進めていくうちに、彼等は大きな部屋に辿り着いた。

それは部屋と言うよりも、大きな集会所のようであった。

いや、壁画があった痕跡も見つけられ、調査団責任者のオーレンが固唾を飲んで呟く。


「聖堂だ、ルナリアンは存在していたんだ」


 それは、元調査団員のリーが想像したものではなく、全く別の生命の物語があったことの証明となるように思われた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る