第78話

悲報は続いております。

自然災害とは被災した時点の死傷者の数にとどまらず

必ず増えていきます。

願いは、これ以上の悲報の報告が無くなってくれることです。

私の知り合いの息子君が昨日

災害の2次支援に向かいました。

どうか安全に

そして人々に平安を。


78


 敵旗艦との交信が途絶えると、


「で、クロウ、その戦略とやらを教えてもらいたいんだが」


 船長に副長のウイスが尋ねる。


「話そう、全員聞いてくれ」


 艦橋に居る全ての乗組員が椅子を回して、クロウに向き合う。


「月からレプトン砲が放たれる」


「どうしてそう思うの?」


 クロウの言葉を受けて、航海士のダフォーが尋ねる。


「まず間違いない、それが合図だからだ」


「どんな合図なんだい?」


 訪ねてきたのはウイスであった。


「月からレプトン砲が放たれる。私たちはレプトン粒子によって吹き飛ばされる。先の戦いで素粒子分解幕を張った状態でどこまで吹き飛ばされるかは、武器商人たちによって計算済みだろう。吹き飛ばされた位置で武器商人たちの旗艦が待ち伏せしている。その場所に現れた時に狙い撃ちしようと奴らは手ぐすね引いて待っている。我々は待ち伏せしているところを迎撃する」


「なるほど、しかしクロウ、待ち伏せしているならレプトン粒子を充填しておいて、俺たちが現れたところで、ドカン、ってことにはなりはしないか?」


 今度は迎撃隊隊長のルイスが身振り手振りを加えながら質問する。


「現れたところで、正確な位置は掴めていない、私たちの船を見つけてからレプトンを充填するはずだ。長時間のレプトン粒子の圧縮は充填装置の爆発を引き起こしかねない。我々は、月からのレプトン砲に飛ばされながら船の充填装置にレプトンを圧縮させる」


「それじゃ、条件は同じで俺たちの船も内部から破壊されるってことにならないかい?」


 ルイスが続けて質問する。


「大丈夫だ、奴らの船は大きいが主砲のエネルギーレベルが最大で10だ。私たちの船はレベル20で素粒子を圧縮できる。レプトンエネルギーをレベル10にとどめておいて辿り着いた空間、奴らの船がこちらを見つけて、レプトンを充填する間に先制を掛ける」


「こりゃ、たまげたね」


「他に質問は?」


 今まで下を向いて作戦を聞いていたリーが顔を上げる、


「作戦とは関係ないのですが・・・」


「構わない、疑問はどんな些細なことでも解いておかないと作戦の失敗につながる」


「素粒子分解幕について教えていただきたいのですが」


「良いだろう、君はビッグバンを知っているね。その前はインフレーションという宇宙を作る前の状態だった。インフレーションは何億度を超えるエネルギーを蓄え、行き先を失ったエネルギーが爆発して、それがビッグバンになった。その時にはまだ星も何もない暗闇の世界だ。しかし、何もなかった訳ではない」


「素粒子」


 とリーが答える。


「そうだ、すでに分かっていることだとは思うが、素粒子だけが宇宙空間を走り巡っていた。しかし、常に物質には反対のものが存在する。素粒子に対しての反物質、即ち反素粒子だ。素粒子と反素粒子が融合すれば物質として存在できなくなり消えてしまう。私たちは、その反素粒子を利用して素粒子を分解することに成功した。但し、素粒子を完全に無くするものではなく、素粒子を分散させることでその破壊的エネルギーの力を無くす装置を作った。それが素粒子分解幕を放出させる装置だ」


 その時、通信士のレイがクロウに報告する。


「ジゼルの船が戦線離脱、後退を始めました」


「前乗組員に告ぐ、作戦開始だ」


「了解、素粒子分解幕放出準備良し」


「反重力装置最大にセット」


 静けさから打って変わって慌ただしく船内が動き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る