第77話



 静かな艦橋の中、通信士のレイがクロウに報告する、


「敵旗艦と交信を開けました」


 レイがそう言った後、艦橋の天面にジゼルの顔が映し出される。


「ロスゴダ総督ジゼルだ、この画面に写っている君が船長かね?」


「そうだ、船長のクロウだ」


「ほほう、思ったより若いな」


「お褒めの言葉に感謝する」


「で?」


「申し入れを承諾しよう」


「休戦成立ということで宜しいかな? 若いのに聡明だな。私の考えでは戦いの結果は半々、互いに傷つき終戦となる。見解の一致だと思っている」


「私も同じ意見だ」


 クロウが言葉を放った後、暫くの沈黙が続いたが、


「どうだね? お若い船長、私たちが手を組めば、全宇宙を支配できるとは思わないかね?」


「認めてくれるのは嬉しいが、宇宙は果てしなく広い、私の手には余りある海原だ」


「そうかね、残念だ。私たちは地球時間で1時間後にここから離脱する。君たちの放ってくれた火の粉で無傷とはいかないからね。応急処置を済ませれば撤退する」


「分かった、地球時間で1時間待とう」


 クロウの言葉を聞き終わった後、他に何か言い残した言葉はないかとジゼルは待っているようであった。


「クロウ君、君たちはどうするのかな?」


「私たちは暫くここで停泊する。月が地球に攻撃を仕掛ける前の予防策だ」


「なるほど」


 そう言いながらジゼルは、意味ありがな笑顔を浮かべ、


「それでは若い船長、また会える日まで」


「会える日があれば」


 交信はジゼルの方から途絶えた。

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