第75話



 クロウ海賊船に戦いを終えた迎撃機が次々と着艦して来る。

傷ついた迎撃機を迎える離発着室は、まるで火事場のように忙しい。

ルイスが環境に戻ると、副長のウイスが手に汗握る有様で操舵輪を掴んでいる。


「ウイス、どうした?」


「おお、ルイス、お疲れさんだったな」


「久しぶりに見る緊張感あふれる顔だが?」


「ああ、奴らが高速で迫って来ている」


「主砲の準備はできているのか?」


「勿論さ、ただ、奴らの船の方がデカい。主砲の射程距離も奴らの方が長いだろう」


「素粒子分解幕の準備は?」


「それもできているさ。あとは船長が戻るのを待つだけだよ」


「そうかい? お前がこの船を任されたんじゃなかったのかい? 船長が戻るには、もう少し時間が掛かるぞ」


「なるほど、そうかい」


「お覚悟は決められましたか?」


「まるでダフォーだぜ」


 そこへ、ダフォーとニーナが戻って来る。


「私がどうかしましたかしら?」


「ダフォー、敵艦隊が高速で迫って来ている」


 告げたのは通信士のレイだ。


「それはそれは、副長の威厳を持って艦長代理を実行していただきましょう」


「ダフォー、分かっているさ。でもね、操舵輪は君に任せたいんだが」


「しょうがないわね。戦闘から帰って来たばかりなのに」


 ダフォーが操縦席に座ると、レイがウイスに声を掛ける、


「艦長代理、敵戦艦より送信あり、出ますか?」


「簡単に艦長代理なんて言わないでくれるかい、出るよ。画面を出してくれ」


 すると画面に敵旗艦艦長と思われる人物が現れた。

鼻は高く、目は鋭い。

頭に毛髪はなく、顔のどこにも毛がない。

かなりの歳を感じるが、目の輝きがそうでもないように見える。


「初めまして、私は当艦艦長のジゼル、君たちの言う武器商人の星ロスゴダの総督でもある」


「私は艦長代理のウイスだ」


「艦長代理? 艦長は居ないのかね、確か、クロウ、と言う名前だったと思うが」


「艦長は宇宙を遊泳中だ」


「遊泳? この戦いの最中に?」


「既に私たちは勝利を収めることを知っている」


「そうかね、では艦長が戻るまで待たせていただきたいのだが」


「その前に用件だけを聞いておこう」


「休戦したいのだが」


「分かった、艦長が帰ってきたら伝えよう。それまで回線を切る。艦長が帰って来たら此方から連絡する」


「良いだろう、では連絡を待つ」


 武器商人の星ロスゴダの総督ジゼルの顔が画面から消えた。


「おい、ウイス。なかなかの威厳だったぞ」


「馬鹿を言うな、こっちは冷や汗もんだったぜ」


 ルイスの言葉にウイスが脱力したように言った。

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