第32話



「どう言うことなの?」


 第2管理棟天文学研究室の前、第3管理棟警備担当のニーナが、第3管理棟超素粒子変換装置担当のリーに詰め寄っている。

今は、天文学研究員のリーに。


「ああ、どうしても知りたい事があって」


「どうしてなの?」


「うん、知りたいことができただけなんだ」


「いつもそうやって、一人で決めて、相談もしてくれない。しかも、超微素粒子変換装置担当はセントラルではエリート中のエリートなのよ」


「あそこは、管理だけの何もしない部署だよ」


「それじゃ満足できないとでもいうの」


「何かを始めたいんだ。地球で研究をしていた時のように、知らないものを知りたいんだ」


「貴方って、いつもそうなんだから」


「相談をしなかったことは謝るよ。でも、本当にやりたいことをやりたかったんだ」


「いいわ! もう分かった。サンドイッチとミックスジュースよ」


「え?」


「晩御飯を奢るだけで許してあげるって言ってるの」


「あ、ああ」


「それと食後のカクテルも」


「あ、ああ」


 そう言い終わるとニーナは、スタスタと廊下を歩いていった。

その背中を見送るとリーは、やれやれ、と言う顔をしたが、深く息を吸って両拳を握り締め肩に力を入れると、


「よし」


 と言って天文学研究室に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る