第33話
ラウンジで男女二人がカクテルを飲んでいる。
「そうなの」
と警備担当のニーナが呟くように言う。
「相談なんてないよ、彼はいつもそうだよ」
環境保全海水分解装置担当のルーが答える。
「でも、いつも一緒のルー君くらいには、何か言っても良いんじゃない? 親友でしょ」
「そんな事はないよ、彼が僕のことをどう思っているかは知らない。僕にとっては大切な友達だって言うことだけさ。大切な友達だから、好きにやってもらいたい。いちいち報告なんて要らないよ」
「なんか男同士って冷たいのね」
「自分自身を大切にしたいだけさ。リーだって悩めば相談をしてくるよ」
「今までに、そんなことあった?」
「ない」
「はぁー、全く男って種族は闇だわ」
ため息をつくとニーナは、グラスを斜めに傾けたりしながらグラスの中を覗いている。
「でもニーナ、君だって分かっていたんじゃないかい? リーが最近、何かを考えていたって」
「そりゃ分かっていたわよ。何かを考えていたってことくらいは。でも、あいつ、何を考えているかが全く謎よ」
「それは僕も同じさ。人が何を考えているかなんて誰にも分からないよ」
「そういうことを言っているんじゃなくって、なんていうか、その、つまり、あいつだけは、本当に分かり難いわ」
「ああ見えてもリーの中では、自分の考えが理路整然と並んでいるのさ。一つのことを考えると過去に学んだ理論が並び始めて、足りないところを埋めて行き、その結果を導く扉を開ける。そうなったら彼を止める事ができる人間なんていなくなってしまう。彼は、そうやって生きてきたんだと思うよ」
「詳しいのね、リーの事」
「え?」
「私なんか、分からない、分からない、って言ってばかりで、あいつの気持ちを分かろうともしない」
「どうしたんだい?」
「ううん、いいの、今夜は付き合ってくれてありがとうね。奢るわ」
「いいよ、自分の分くらい自分で出すよ」
「いいの、本当はお酒、あんまり飲まないんでしょ。付き合ってくれてありがとう」
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