第29話
惑星ウォフル、ハビタブルゾーン、其処は人類が移住できる可能性を持った星。
生命移住可能領域である。
クロウの船はこの星を旋回し続けている。
「おい、クロウ、何を考えてるんだい?」
副長のウイスが何気なく船長に尋ねる。
「勘違いだったようだ」
「船長が勘違いだって? 珍しいこともあるもんだね。マザーはなんて言っているんだい?」
「マザーも此処で良い、と言っているんだが」
マザー、この船の守り神とも言えるコンピューターだ。
「そりゃ参ったね。マザーまでが勘違いなんて考えられないぜ」
「クロウ、どうするの?」
ウイスに代わって指示を仰いできたのは女性操舵師のダフォーである。
「ハビタブルゾーン・ウォルフか・・・、戻ろう、航路をカシオペアへ」
クロウが指示を下すと、
「やったぜ、やっと帰れるね」
とルイスが喜んで答える。
カシオペア。
其処にはパルサーを放つ中性子星が存在する。
パルサーを放つ中性子星は、星からの波長で光るため熱を持ってはいない。
このような星は、他に白色矮星と呼ばれるものもある。
ただし、白色矮星は爆発後の予熱で光っているものであり、やがては光を失い、他所から来た光の照り返しで輝く星となる。
宇宙で起きるこの爆発とは、超新星爆発のことを言い、これは星での核爆発の終焉を意味する。
核融合を繰り返して光る太陽よりも大きな恒星は、太陽と比べ物にならないくらいの核融合を繰り返している。
やがてその星は赤色巨星や青色巨星と呼ばれる星へと膨らみ、そして超巨星へと変貌を遂げ、やがて核爆発を起こすべく原子を失うと、星には熱が篭り、最後の爆発、超新星爆発を起こす。
この時にできるのが、中性子星や、白色矮星である。
最も質量の大きい星は空間に存在することができなくなり、空間へと沈み、これがブラックホールと呼ばれてきた。
例えば、布の上へ広い錘を置けば、全体に負荷がかかり布は歪むだけだが、全く同じ質量の錘を一点だけに置けば、その布は耐えきれなくなり、そこだけが破れて穴が開いてしまう。
ブラックホール、一度飲み込まれれば光さえも脱出できないと言われる所以は、空間の歪みではなく、空間の落とし穴であるということで解明されてきた。
超新星爆発の経験を持つカシオペア座には多くの惑星型星雲があり、その中には中性子星や白色矮星が存在する。
勿論、ブラックホールも存在する。
惑星型星雲、それは恒星の末路で超新星爆発を起こしてできた原子と破片の集まりである。
その惑星型星雲の中でも中性子星は、数々の素粒子が、周期的に飛び交っており、これがパルスとして地球に捉えられ、地球外生物の存在が提唱された時期もあったが、既に地球では否定されている。
然し、実は?生命の存在を肯定できたとすれば?
数々の素粒子が周期的に巡っている星ならば、其処に住む生命体は地球人の10倍以上の速さで進化ができることになる。
クロウたちを乗せた海賊船が、カシオペア座内、惑星型星雲を目指して、光速移動から時空間航行へと移った。
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