第24話
ニーナに言われた通りに、その日の数日後にルーはリーをラウンジに誘った。
窓際のテーブルに陣取ると、二人はカクテルを注文した。
リーは広いラウンジの隅の席で窓の景色を見ていたが顔を正面に向けて、ルーに話しかけてくる。
「なぁ、君から酒の誘いって、どういう風の吹き回しだい」
「うーん、最近さぁ、考え込むことが多くなってないか?」
「ああ、それね。あの日の出来事が忘れられないんだ」
「そうだと思ったよ。でも、他人に心配をかけちゃいけないよ」
「ニーナの事かい?」
「うん、そうだよ。彼女は彼女なりに君のことを心配してるんだ。元気がないって言ってたよ」
「元気はあるんだけどね」
「なぁ、リー。考えても答えが出ないなら忘れちまえよ。君らしくない」
「そうなんだけどね」
その時、二人の前に注文したカクテルがテーブルに並べられた。
それぞれに注文したカクテルを手に取り、唇をグラスに当てた。
また、静けさがテーブルに戻ると、リーは再び窓の外を眺めた。
暫くして、またもやリーから話し出す、
「なぁ、ルー、フラウンホーファー線って知っているかい」
「勿論だよ、この星で何かしらの管理棟で働く人間なら誰もが知っていると思うよ。分光器で虹色に分けられる色の間を走る黒い線だ」
「そう、その虹の中を走る黒い線だ。不思議だとは思わないかい?」
「今更どうしたんだよ?」
「今現在、3万本のフラウンホーファー線が見つかっているよな」
「そうだね」
「光の中に存在する色の中に黒い線があり、分光器で最初に見つけられてから、さらに研究が進んで、あの虹色の中にあるそれぞれの黒い線にアルファベットが名付けられた。C線が水素、D線はナトリウム、F線はカルシウムだ」
「ああ、その通りだ」
「不思議だとは思わないかい」
「既に科学的に証明されているのにかい?」
「うん、そうなんだけどね。太陽の核融合では水素からヘリウムまでしか作り出されない筈なんだ。なのに太陽光線に見られるフラウンホーファー線には水素は当たり前だけど、ナトリウム、カルシウム、それどころか金、Au原子の存在も認められてるんだ。現在までに見つかっているフラウンホーファー線は3万本だぜ。しかも、原子宇宙と言われている宇宙は水素とヘリウムしか存在しなかった。それを考えると、一体どれくらいの大きさの核融合という爆発が、どれくらいの数で起きてきたんだろう。それは言うまでもなく太陽が生まれる前のことだ。でないと太陽大気にこんなにも多くの原子が存在する筈がない」
ルーは、リーの言葉を黙って聞いていた。
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