第22話
ルーとニーナが第4管理棟のラウンジで食事をしている。
ルーはカルボナーラを、相変わらずのパスタだ。
ニーナも同じで、相変わらずのサンドイッチだ。
但し、珈琲ではなくカップスープを注文している。
彼女にとって、夕食は珈琲よりもその方が良いらしい。
ニーナはカップスープを一口飲むとルーに話しかける。
「ねぇ、最近、リーってね、おかしくない?」
「そうかなぁ」
「あら、いつも一緒なのに気付かないの?」
「一緒に居るからこそ、分からない事もあるよ」
「そうね。先日ね、元気無さそうだったから、ここに誘ってみたの。お酒でもどう?って」
「彼は誘いに乗ったかい?」
「うん。でもね、あの要らぬことばかり喋るリーが、一言も、って言うと大袈裟だけど・・・、無口なの」
「そうなんだ」
「そうなんだって、親友として気にならないの?」
「親友って、周りから見れば、そう見えるんだ」
「あら、冷たいのね」
「そういう意味で言ってるんじゃないよ。彼は僕にとっては大切な友人だよ。ただ、周りも同じように見てたんだって思っただけだよ。で、一言も喋らなかったのかい?」
「私の話には頷いてくれるけど、自分からは喋らないのよ。おかしく思うでしょ」
ニーナはルーに同意を求めるような目でルーを見つめた。
仕方なくルーは同調する。
「そうだね、会えば最初に話しかけてくるのがリーだからね」
二人は少し考え込んでから、食事を始める。
第4管理棟のラウンジは何処の棟よりも大きい。
二人が食事をしているテーブルも、自ずと小さく見える。
何処の棟にも食事のできるラウンジがあるが、ドームの環境設備を管理している棟は各棟の中でも働いている人が多いので、棟そのものも何処の管理棟よりも大きく、その分。必然的にラウンジも広くなる。
ニーナがサンドイッチを殆ど食べ終わってから、ルーに喋りかける。
「ねぇ、リーの親友さん? 今度はあなたがリーをお酒に誘ってみてよ」
ルーはフォークに巻いたパスタをお皿に戻すと、
「それはいいけど、何かの解決になるのかなぁ」
「何言ってるのよ、解決できなくても話くらい聞いてあげるのが親友じゃない」
「分かったよ、誘ってみるよ」
「ありがと、今夜は割り勘ね。リーの事で良い話が聞けたらご馳走してあげるわ」
「そんなのいいよ」
「馬鹿ね、珈琲一杯だけよ」
「それは、ご馳走だね」
ニーナはサンドイッチの最後の一口を口へ放り込み、しっかり嚥下すると、
「じゃ、お願いね」
と言ってテーブルを離れて行った。
一人残されたルーは、暫く食べるわけでもなくパスタと戯れていたが、フォークを皿に置くとテーブルを離れて行った。
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