第18話



 目が覚めたのは、第7セクター内の病棟である。

最初に目覚めたのはルーである。

リーは別室のベッドでまだ眠っているようだ。

腕には細い管を付けた針が一本刺されたままになっている。

怪我は無い。

バギーでの衝撃も全て宇宙服が守ってくれていたようだ。


「お目覚めのようですね」


 巡回の看護師が声を掛けてくる。


「ええ、済みません、お世話になります」


「お体で不自由な所はありませんか?」


「ありがとう、至って健康ですよ。この針の刺さった左腕以外はね」


「もうすぐ抜けますよ」


「リーは?」


「ああ、あの運転手さんですね。それにしてもあの荒野から、よく自力で帰って来れましたね」


「ええ? ああ、そうね、リーはプロのレーサー並のドライバーですから」


「それにしても、充電も酸素もギリギリでドームの入り口に横付けって、まるで計算されたようですよ」


「そうね、そこ、そこわね、リーは計算が得意ですから」


 看護師は、軽く笑顔を作ると去って行った。


 暫くすると、次の訪問者が現れた。

点滴をガラガラと引き摺りながらやって来た彼は、ルーを見ると、


「よう」


 と声を掛けてきた。


「もう歩けるのか?」


「ああ、君も歩いてみなよ。全然大丈夫だ」


「僕は、君とは違うよ」


そう言うとルーは上半身を起こしてみた。


 リーは、ルーが上半身を起こしたところを確認して、ベッドの横に備え付けてあるパイプ椅子を引き出し、そこに座った。

暫くの沈黙を守ってから、リーはルーに話し始めた。

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