第9話

 


 船が木星の第三衛星ガニメデに着くと、早々に乗組員が小型の重機で、地球から奪った武器を倉庫へと運ぶ。

重機を器用に操作しているルイスが、


「然しねぇ、船長のやる事は全くわからねーよ。奪った武器を売り捌く訳でもなく、こんな辺鄙へんぴな星に大事に保管しとくだけだってね」


 独り言は全て宇宙服に付けられている無線機で船内に聞こえている。

それをクロウは黙って聞いている。

薄ら笑いさえ浮かべていそうな顔だ。


「おいおい、艦橋に居るみんなに聞こえてるんだぜ」


 ウイスがルイスに向かって無線を飛ばす。


「畜生、それを忘れていたよ」


 クロウはルイスの言葉を聞いて微笑む。

クロウの傍で立っている若い船員が、語りかけるでもなく言う、


「こんなに多くの武器を保管するためだけに奪ったのですか」


 その言葉を受け取ったのはウイスである。


「そうさ、シラー。然しね、保管するために奪った訳じゃないんだ。武器は奪われる、ってね、警告だよ」


「どういう警告なんでしょう?」


「平和を愛しなさい、って警告だよ。ね! 船長」


「ああ、出来るだけ、戦いは避けたい」


 ウイスの言葉にクロウは答えるが、シラーも独り言の様に言う。


「海賊が? ですか」


「船長、こりゃ一本取られましたね」


 そう言ってウイスが大笑いするが、クロウは、ふふ、と笑うだけで、シラーは苦笑いを隠せないでいる。

そして、再び船外で作業しているルイスに無線で呼び掛ける、


「ルイス、帰りに食料を持って来るのを忘れるなよ」


「当然だよ、忘れる訳がないさ、ウイス副長殿」

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