第8話



 食堂から帰ると第4管理棟の環境保安室へとルーは帰って行く。

別れ際にリーが声を掛ける。


「さっきの話が気になるのかい」


「いや、別に」


「お前も言ってたじゃないか、海水輸送船なんだ。武器とは関係ないってね。更に言えば、海賊だぜ、しかも異星人ときたもんだ。お前とは何の縁もない話じゃないか」


「分かっているよ、じゃあな、廊下で立ち話をしてるところなんてニーナに見つかったら何を言われるか分かったものじゃないからね」


「おお、その調子。戻って来てくれたね、本来のルー君に」


「いちいちうるさいんだよ、じゃあな」


「おう、じゃあな」


 リーは同じ第4管理棟の自室に戻ると超素粒子変換装置の状態を確認した。

全て正常に動いている。

この装置が始動してから、一度も警報装置が鳴ったことはないのだが、確認は常に必要だ。

とてつもなく大きな装置だが、高性能コンピュータにより完全無欠な制御ができている。

地球で起こった放射能漏れの時のように、事故はあり得ない、ではなく。

事故はあるものだとして捉え、どういう事故が起こっても、それをいかに処理するかを考え常に事故があった時の抑制装置が後に控えている。

事故を起こさないようにすることは大切だが、それが起こった時に可及的速やかに処理できることの方が重要であると考えた結果だ。。


 広いタッチパネルの上で青いランプが点灯し続けている。

全ては安全だ。

念の為に監視カメラで各ブロックをチェックしてみる。

超素粒子変換装置は静かに動き続けている。


 この宇宙で無くなることはない波動エネルギー。

波動がなくなる時、それは宇宙が存在しなくなる事を意味する。

超素粒子変換装置そのものが永遠の命を持っているかのように、音もなく動き続けている。

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