第5話



「やあ、リー。超素粒子変換装置の調子はどうだい」


「良好さ、それより、そっちの海水分解装置の方はどうだい」


「うん、こちらも何の異常もないんだけどね。気になることはひとつだけ、昨日到着予定だった輸送船が到着していないんだ」


「どういうことだい? 多少の誤差はあるにしても、昨日と今日じゃ誤差範囲を越え過ぎじゃないか」


「そうなんだ、今ね、宇宙警備隊が躍起になって探しているそうなんだけど、まだ捜索中だそうだ」


「おいおい、それって今流行りの宇宙海賊ってことかい」


「うーん、流石にそれは僕には分からないけど、それよりも心配なのは此のドームの水量なんだ。人工水は作れるけど、海水分解装置に頼っているのも事実なんだから」


「そうだね、補填的に海水輸送業者に頼っていることは事実だからね」


リーとルーが、そんな会話の途中に内線電話がかかって来た。


「はい、第4管理棟、リーです」


「こちら第3管理棟のニーナよ」


「やあ、ニーナ、どうしたんだい」


「警備担当の第3管理棟からの連絡なんだから、良い知らせじゃないのは分かるわよね」


「ああ、もしかして」


「多分当たりよ、ルーに繋いで」


「ルーなら、ちょうど今、ここに居るからこのまま代わるよ」


「そうしてちょうだい」


「やぁニーナ、ルーだ。もしかして海水輸送船のことかい」


「ええ、そうよ。先ほど警備隊から連絡が入ったんだけど、輸送船がやられたわ」


「宇宙海賊かい?」


「ええ、奴らの仕業だそうよ。でも盗まれたものは海水じゃないの」


「それじゃ何を?」


「船は大量の武器を積んでいたと考えられる痕跡が残っていたそうよ。既に地球を離れる前からその船は乗っ取られていたみたいなの。だから、乗組員もいないし、輸送船に残っていたのは海水だけ、ってこと」


「奴らは一体何処でどうやって暮らしてるんだ」


 その会話を聞いていたリーがとぼけたような声で言う。


「もしかしたら、人間じゃないかもしれないね」


「宇宙人てか?」


「二人ともバカな会話はやめて業務に戻ってちょうだい。報告は以上よ」


 リーとルーは顔を見合わせて、互いに両手を広げて声を出さずに笑い合う。

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