黄色いベンチの上で
マンションにある小さい公園の黄色いベンチにオレと二階堂あまねは腰掛けていた。
二人の目線が同じ高さで交わる。
「まさかあんたと付き合えるとは思わんかったわ」
頭の横で二つに結ばれた黒髪を揺らし、身体をくねくねさせながら、二階堂あまねはやや照れながら言った。
全然可愛くなかったが。
まさか二階堂あまねと付き合うなんて。
だってあの展開じゃ告白を断れない。
二階堂あまねはオレのために涙まで流したのだ。
それなら二階堂あまねの期待に応えるのが男じゃなかろうか。
今日からオレと二階堂あまねは恋人同士だ。
オレと二階堂あまねは他愛もない会話を終え、ベンチから立ち上がると、公園に柴犬を散歩させている、マンションの管理人が入ってきた。
オレは中年男の管理人に挨拶した。
二階堂あまねもしゃがれた声で挨拶した。
「おう、兄ちゃん!隣におんのは彼女かっ?」
管理人は大きな声で言った。
マンションに響いている。
オレは恥ずかしながら、そうですと言った。
二階堂あまねの顔が華やいだ。
ところが、柴犬が大きな声でオレたちに向かって吠えてきた。
「ワン、ワン、ワンッ!」
吠えた声がマンションに響く。
「やかましんじゃどアホッ、このアホ犬が」
二階堂あまねが怒鳴ってしまった。
柴犬がさらに好戦的になり、オレたちに向かってこようとしたが、リードがピーンと引っ張られこちらに向かってこれない。
「こらっ、ポチは、静かにしなさい」
管理人が「ポチ」と呼ばれる柴犬を叱った。
ポチが吠えるのをやめた。
二階堂あまねは「怖かったぁ〜」と甘えた声で言った。
オレは新喜劇のノリみたいやなと思った。
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