第50話
一月四日、ベットから起き上がり、スマホを見ていると、隣の部屋からガチャガチャと音が聞こえてくる。多分、麻里奈がクローゼットの中を整理しているのだろう。
俺も少しクローゼットの中を整理することにした。クローゼットを開けると、前の家から持ってきた漫画が大量に入っていた。今は全てスマホの中に入っているから、あまり紙の本を読むことはない。俺は全て処分することにした。一旦、テーブルの横に置いた。これでだいぶクローゼットに余裕ができただろう。でも、この前の麻里奈のクローゼットを見ると、これで収まるか不安だ。
そんなことを思っていると、インターホンが鳴った。ドアを開けると、麻里奈のお父さんとウルフカットの大学生くらいの男の人が立っていた。
「ど、どうかしました?」
「麻里奈の部屋の整理にきたついでに顔を出してみたんだ」
「そうだったんですね」
「お父さんがすみません」
と麻里奈のお父さんの横にいる男の人が言った。
「失礼ですが、どなたですか?」
「麻里奈の兄です」
麻里奈のお兄さんは韓国アイドルみたいな見た目をしていて、全くギャル男ではなかった。しかし、目の形がすっぴんの時の麻里奈に似ている。
「そうだったんですね」
そう言うと
「麻里奈の服とか多いけど大丈夫かな?」
と麻里奈のお兄さんが聞いてきた。
「多分、大丈夫だと思います」
そんなことを話していると、
「お父さんとお兄ちゃん邪魔なんだけどー」
とダンボール箱を抱えた麻里奈が玄関に来た。
「もう荷物まとめたのか?」
「あと四つくらい箱があるよー」
「全然減ってないじゃないか」
「お父さんに言われたくないんだけど」
「まあまあ」
俺は仲裁に入った。
「お父さんと麻里奈、直人くんの前で恥ずかしいよ」
「そ、そうだな」
「入っていい?」
「うん、いいよ」
そう言って、麻里奈は俺の部屋に入ってダンボール箱を置いた。
「運ぶの手伝おうか?」
「うん、お願いしたいかもー」
「わかった」
俺は麻里奈の部屋に入った。麻里奈の部屋に入ると、ソファーの横に置いてあるダンボール箱が目についた。
「結構あるね」
「うん、これでも減らしたんだよー」
確かに、衣類品の入ったゴミ袋が置いてあった。しかし、一袋しかない。
「そ、そうなんだ」
「全然減ってないって思ったんでしょー」
「そ、そんなことないよ・・・」
「女子はトレンドとかあるから大変だんですぅー」
そう言って、麻里奈はダンボール箱を持って俺の部屋に言ってしまった。俺も跡を追うようにダンボール箱を運んだ。
俺の部屋は一瞬でダンボール箱だらけになった。すると
「直人の部屋に私の部屋にあるソファー置かない?」
「いいの?」
「うん、どうせ捨てちゃうと思うからー。お父さん、いいよね?」
「ああ、大丈夫だ」
そう言って、麻里奈のお父さんとお兄さんは俺の部屋にソファーを持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
「このくらいしかできないからねー」
麻里奈のお兄さんはそう言って、テーブルの横に置いてある漫画を見つめた。
「直人くんはこの漫画読んでるの?」
「はい。でも、スマホで見れるから処分しようかなって感じで・・・」
「だったら、その漫画欲しいな」
「おい、傲慢なことを言ってるんじゃない」
「引き取ってくれるなら、ありがたいんで・・・」
「そ、そうなのか?」
麻里奈のお父さんは少し言いすぎたと言わんばかりの顔をした。
「はい」
「ありがとうね」
麻里奈のお兄さんはとても嬉しそうに漫画を車に積みにいった。そのおかげで、だいぶ俺の部屋が綺麗になった。これなら、麻里奈の荷物が多くてもなんとかなりそうだ。
「とりあえず、一通りのことは終わったな」
「そうですね」
「麻里奈はもう少しモノを減らしなさい」
「わかってるって〜」
「行動で示しなさい」
「うるさいなー」
「親に向かってなんていう口の聞き方だ!」
「まあまあ」
今年、俺は親子ケンカの仲裁ばかりしている気がする。
「麻里奈と仲良くやってくれよ」
「わ、わかりました」
さっき揉めてた人に言われたくないと心の中で思ってしまった。そんなことを思っていると、
「お父さん、そろそろ帰ったほうが・・・」
と麻里奈のお兄さんが言った。
「あ、そうだった」
「じゃあ、帰るから」
「うん、お兄ちゃん、来てくれてありがとう」
「大したことしてねぇよ」
「俺には言わないのか?」
「お父さんもありがとう」
「じゃあ、また近いうち来るから」
「わかったー」
「直人くんもよろしく」
「こちらこそ」
そう言うと、二人は車に向かって行った。
ドアを閉め、俺と麻里奈はソファーに座った。
「これでずっと一緒に居られるね」
「麻里奈の夢叶ったね」
「そー。めちゃくちゃ嬉しー」
「俺も嬉しいよ」
「これからこの部屋でたくさん思い出作ろうねー」
「そうだね」
今日から俺と麻里奈の新しい生活がこれから始まる。
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