第48話

 翌朝、年末年始に出たゴミをまとめていると、インターホンが鳴った。多分、ドアの向こうには麻里奈がいるのだろう。そんなことを思いながら、ドアを開けると麻里奈のお父さんが立っていた。


「直人くん、久しぶり」


「お久しぶりです」


「急で申し訳ないが、これからうちに来てくれないか?」


「いいですけど・・・」


「支度を終えたら、黒のセダンの後部座席に乗ってくれ」


「わかりました」


 そう言うと、麻里奈のお父さんは俺の部屋のドアを閉めた。


 俺は急いで支度をして外に出た。すると、隣の部屋から目を擦りながら麻里奈が

出てきた。


「直人・・・?」


 多分、麻里奈は寝起きなのだろう。すっぴんで髪の毛もボサボサだ。


「やばっ、今ビジュ終わってるからそんなに見ないでー」


「そんな格好でどこ行くの?」


「急にお父さんが来て・・・」


「そうなんだ」


「直人はー?」


「俺も麻里奈のお父さんに呼び出された」


「そーなの!?」


「うん、とりあえず車に行こうか」


「そーだね」


 俺と麻里奈はアパートの前に泊まっていた黒塗りの高級セダンの後部座席に乗り込んだ。


「やっと来たか」


「遅くなってすみません」


「大丈夫だ。しかし、麻里奈はなんでこんなに髪がボサボサなんだ?」


「お父さんが急げって言うからセットしなかったのー」


「そんなに急がなくてもよかったのに・・・」


「だったらそう言ってよー」


「まあまあ」


 俺は二人の仲裁に入った。すると


「直人には関係ないから」

と冷たく言われた。


 俺は少し傷ついた。


「直人くんになんて態度を取ってるんだ!」


 なぜか麻里奈のお父さんが俺を擁護し始めた。


「俺の直人くんにそんな態度をとるな」


「お父さんのじゃなくて私の直人だから」


「そんなに・・・。両方のものですよ」


「「それは違う」」


 丸く収めようとしたが、なかなかうまくいかない。そんなことで揉めているから、なかなか出発しない。そんなことを思っていると、


「ちょっと、電話だ」

と言って麻里奈のお父さんは電話に出た。電話を切ると


「じゃあ、向かうよ」

と言って運転し始めた。


 麻里奈のお父さんは運転をし始めると、急に静かになった。麻里奈は相当眠たかったのか、車の中で爆睡だ。スマホを見たりしたら失礼だと思い、俺はずっと車窓を眺めていた。


 早くこの時間が終わって欲しいと思っていると、


「ついたよ」

と言われた。


「着いたみたいだよ」

と麻里奈の肩をを叩いて起こした。


「うーん、着いたのー?」


 寝起きだからか、麻里奈は少し不機嫌そうだ。


 俺と麻里奈は車から降りた。


「ちょっと歩くよ」


「わかりました」


 そう言って、駐車場から家に向かい始めた。駐車場は車が五台くらい止められそうだ。駐車場がこれだけ広いと家のサイズがとても気になる。そんなことを思っていると、


「ここが米村家だ」

と言われた。


 俺は人生で初めて豪邸というものを見た。米村家は日本のホワイトハウスといってもいいほどの広い庭と大きな家が立っている。


「デ、デカ・・・」


 俺は建物に圧倒されて声が出なかった。


「まあ、ここで話すのもあれだから、中に入ってよ」


 そう言われ、俺は門を越え、家に入った。


 玄関に入ると、大理石の床が目に入った。


「お邪魔します」


「そんなに畏まらなくていいよ」


 俺は靴を脱いで上がった。


「こっちに来てくれ」


 そう言われ、俺は跡をついて行った。


「ここで麻里奈と待っていてくれ」


「わかりました」


 横開きの扉を開けると、畳が敷き詰められた和室だった。俺と麻里奈は座布団に横並びになって座った。


「なんで直人は連れてこられたかわかる?」


「わからない。急に来てって言われた」


「私もそう言われたんだよねー」


 これから何を言われるのか、俺はとてもドキドキしている。


「お父さんがごめんね」


「大丈夫だよ。今日バイト入ってないし」


「そういえば、昨日そういってたねー」


 そんなことを話していると、


「お父さんがごめんなさいね〜」

といって麻里奈のお母さんがお茶を持って入ってきた。


「あら、もしかして直人くん?」


「そうです」


「麻里奈から話は聞いてたけど、いい子そうね〜」


「あ、ありがとうございます」


 俺はテンションの高い麻里奈のお母さんに少し戸惑っている。


「お母さんもあんまり直人を困らせないでよー」


「あら、そんな困らせるようなこと言ったかしら?」


「お父さんほどではないけど・・・」


「麻里奈しか来ないと思ってたからついつい興奮しちゃったの」


「私と直人を呼んでお父さん、どうかしたの?」


「私も知らないのよ。なんか急に麻里奈に伝えないといけないって言い出してね」


「そーだったんだー」


 そんなことを話していると、麻里奈のお父さんが部屋に入ってきた。そして、俺と麻里奈に向かい合うように座った。


「麻里奈に話さないといけないことがある」


 麻里奈のお父さんは真剣な眼差しでそう言った。









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