SIDE B

 直人と麻里奈が屋台から離れた後


「はぁー」

と大きなため息をついた。


「お父さんどうしたの?」


「やっぱお金とればよかったなーって」


「なんでそんなこと言うの?」


「だって、本当は儲かってないんだもん」


「そういえば、今日は麻里奈たちが初めてのお客さんだったね」


「甘酒の方はどうなんだ?」


 美春はお父さんの屋台の隣で甘酒を売っていた。


「焼きそばと違ってそれなりに売れてるよ」


「そうか」


 そう言って、難しそうな顔をする。


「お父さんったらそんな顔してどうしたの?」


「美春に彼氏はいらないな」


「お父さん、麻里奈との会話聞いてたの!?」


「嫌でも聞こえてくるからな」


「さっき聞いてないって言ってたのに・・・」


「美春にはお父さんがいるから彼氏はいらない」


「意味わかんないんだけど」


「でもな・・・」


「どうした?」


「麻里奈ちゃんの彼氏みたいに誠実そうな人だったら許すかもしれないな」


「そうなんだ」


「でも美春に彼氏はいらないな」


「今年こそは彼氏作るって話聞いてたのにそんなこと言わないでよ」


「お父さんはとても悲しいなぁ〜」


 このやりとりを道行く人々は冷たい視線で見ていた。


「そんなことばっか言ってるから客が来ないんじゃないの?」


 そう言って、美春は屋台に戻った。

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