第45話

 俺と麻里奈はおみくじを引きに向かった。向かっている途中、


「昨日、凶が出たんだよね」

と言った。


「そーなの!?」


 麻里奈はとても驚いていた。


「そんなに驚くこと?」


「うん、凶って存在したんだ・・・」


「存在するよ」


 そんなことを話していたら、おみくじのあるところに着いた。


「直人が先に引いてー」


「わかった」


 俺は百円を入れて、みくじ箱の中に手を入れ、みくじ紙を一枚取った。みくじ紙を見ると、吉と書いてあった。俺は少し安心した。そんなことを思っていると


「どうだったー?」

と聞いてきた。


「吉だったよ」


「私と一緒だー」


 麻里奈のみくじ紙を見ると番号まで一緒だった。


「全く一緒のことが書いてるね」


「本当だー」


「こんなことあるんだ」


「私も初めてー」


 みくじ紙を見ると、悪いことはあまり書かれていなかった。最近、悪いことばかり書かれてあった俺は安心した。


「あんまり悪いこと書かれてなかったねー」


「そうだね」


「でも・・・」


 麻里奈は旅行のところを指さしていた。


「旅行は見合わせって書いてある」


「それがどうしたの?」


「今年は直人と一緒に旅行に行きたいと思ってたのにー」


「りょ、旅行!?」


 突然の告白に驚いた。


「うん、夢の国に泊まりで行きたいなーって」


「そうだったんだ」


「ちょっとショックだなー」


 麻里奈は少し凹んでいた。


「結んでいけばいいんじゃない?」


「その手があったか」


 麻里奈はそう言って、おみくじかけに行った。


「直人も結ぼー」


 そう言われて、俺もおみくじをおみくじかけに固く結んだ。


「これで直人と一緒に夢の国に泊まりで行けるね」


「うん、そうだね」


「いつ行こっかー?」


「春休みに行こうよ」


「私もそう思ってたー」


 麻里奈はとても嬉しそうに言った。


「あっちの露店行こー」


「いいよ」


 俺と麻里奈は露店に向かった。思っていたより、露店の周りは人が集まっていた。


「繁盛してるね」


「そーだね」


「麻里奈の友達のお父さんがやってる露店ってどこ?」


「多分、この辺だと思うんだけど・・・」


 そう言って、麻里奈はあたりを見渡している。すると


「あっ!」

と言って、屋台の方を指差した。


「坂崎さーん」


「麻里奈ちゃんじゃん、久しぶりだな」


「一年ぶりですねー」


「今日は由紀も手伝ってくれてるんだよ」


「どこどこ?」


 麻里奈は食い気味で聞いている。


「隣にいるよ」


「そーなんだー」


「そういえば、隣にいる子は彼氏か?」


「そーです」


「どうも」


 俺は軽く会釈をしながら言った。


「せっかくだから何かおまけしてあげるよ」


「いいんですかー?」


「カップル割って名目にしておくよ」


「直人どれかうー?」


 そう言われたが、どう見たって焼きそばしか売ってなだそうだ。


「焼きそば買おうか」


「そーしよ」


「オッケー」


 そう言って、焼きそばを焼き始めた。


「お父さん、誰と話してるのー」

と言っておくから黒髪ショートヘアの女子が出てきた。


「美春、久しぶりー」


「ほ、本当に麻里奈なの?」


「そうだってばー」


「髪染めてたから全然わからなかったよー」


「中学の時は黒髪だったからねー」


「麻里奈の隣にいる子は?」


「私の彼氏だよー」


「そーなの!?」


「そんなに驚く?」


「中学の時、あれだけ恋愛はもうしないって言ってたのに」


 麻里奈がそんなことを言っていたなんて知らなかった。


「昔の話はいいって」


「かっこいい彼氏だね」


「そーでしょー」


 そう言って、麻里奈は腕に抱きついてきた。


「女子校の人に見せつけないでよ」


「そんなつもりじゃないしー」


 麻里奈は自慢げにそう言った。


「私も彼氏ほし〜なー」


 その発言を坂崎さんのお父さんはなんともいえない表情で聞いていた。すると


「焼きそばいくつ買う?」

と割って入ってくるように聞いてきた。


「二人で分けて食べる?」


「そーしよー」


「じゃあ、一つで」


「オッケー」


「お父さん、話してる途中に割り込まないでよ」


「ごめんなぁ、全く聞いてなかった」


「本当に周りのこと見てないよね」


「まあまあ」


 麻里奈は二人の仲裁に入った。


「そういえば、麻里奈の彼氏さんはなんで麻里奈と付き合いたいと思ったの?」


「いつもそばにいて欲しいなって思ったからです」


 自分で言っていて少し恥ずかしい。麻里奈の方を見ると、麻里奈も恥ずかしそうにしていた。


「何それー。めちゃくちゃ愛されてるじゃん」


「でしょー」


 そんなことを話していると


「お待たせ」

と言って焼きそばを渡してくれた。


「いくらですか?」

と聞くと


「今年は儲かってるからいいよ」


「そんなわけには・・・」


「いいから」


 そう言われ、焼きそばをタダでもらった。


「本当にありがとー」


「これぐらいのことしかしてあげられないから」


「今日は久しぶりに麻里奈に会えてよかった」


「私もー」


「早く彼氏とどこか行きな」


 少し羨ましそうにそう言った。


「そーする」


 そう言って、麻里奈は俺の手を握った


「じゃあ、行こっか」


「そうだね」


 そう言って、俺と麻里奈は屋台から離れた。








 

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