第44話
俺と麻里奈は駅前の神社に歩いて向かっている。
「思ったより人が歩いてるねー」
「そうだね。みんな参拝客かも」
「二日だけど結構行く人いるんだねー」
「俺の父親は三が日が終わってから初詣に行くよ」
「そーなの!?」
麻里奈はとても驚いていた。そんなに驚くことだろうか?
「もう露店が無くなっちゃってるじゃん」
「なんか、人が少ない時に行った方が願い事が叶うとかって意味わからない持論を持ってるから・・・」
「面白い人だねー」
「麻里奈は露店が目的なの?」
「うん、お祭りみたいで楽しいじゃん」
麻里奈はとてもワクワクしている様子だ。その姿がまるで子供のようみたいだった。俺はその姿が可愛らしくて少し微笑んでしまった。すると
「ねー、子供みたいって思ったんでしょー?」
と思っていたことを当てられてしまった。
「な、なんでバレた?」
「顔に書いてあるからだよ」
「そっか」
「そんな風に思ってたのー?」
「可愛らしいなーとも思ったよ」
「そ、外でそんなこと言わないでよー」
そう言って、麻里奈は俺に寄りかかってきた。
「麻里奈こそ、急に寄りかかってこないでよ」
「なんでー?」
「心の準備が必要だから・・・」
「そっかー」
麻里奈はわかってくれたみたいだ。しかし、俺に寄りかかったままだ。少し歩くのが大変だが、麻里奈の気持ちが直接伝わってきて少し嬉しい。
そんなことを思っていると、赤い鳥居が見えてきた。
「もう着くね!」
「そうだね」
鳥居の周りにはたくさんの参拝客がいる。しかし、昨日浅草寺の混雑具合を知っているから、そんなに驚かなかった。
「とりあえず、お賽銭しようか」
「そーだね」
俺と麻里奈は参拝の列に並んだ。十分ほど並べばお賽銭が出来そうだ。
「家族連れが多いねー」
「そうだね」
あたりを見渡すと、カップルは少なかった。地元の神社だから、周辺の人しか来ていないのだろう。
そんなことを思っていると、俺の膝に小さな男の子がぶつかった。多分、三歳くらいだろう。
「大丈夫?」
そう聞くと、男の子は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「もしかして迷子?」
そう聞くと男の子は小さく頷いた。どうすればいいか考えていると
「すぐに見つかるから大丈夫だよー」
と麻里奈は男の子に目線を合わせてそう言った。
「本当に?」
「うん、このお兄さんと一緒に探すからねー」
そういうと、男の子は少し安心した様子だった。
「両親はどこにいるかな?」
「うーん、お守り売ってるところとかかなー?」
「そっちの方に行ってみる?」
「でも、変に動かない方がいいかもしれない」
麻里奈の言う通り、ここから動かない方がいいかもしれない。そんなことを思っていると、
「見つけた!」
と若い夫婦が近づいてきた。
「パパー、ママー」
男の子は両親の元へ走って行った。
「見つかってよかったね」
「そーだねー」
一安心していると、
「うちの子がすみませんでした」
と男の子のお母さんが言ってきた。
「「大丈夫ですよ」」
なぜか俺と麻里奈は声が重なってしまった。
「本当にありがとうございました」
そう言って、その家族は俺と麻里奈のところから離れていった。
「麻里奈すごいね」
「何がー?」
「子供に慣れてて」
「子供が好きだからねー」
「保育園の先生とか向いてそうだね」
「それ、この前菜々子にも言われたー」
そんなことを話していたら、賽銭箱の前にきた。
「あっという間だったねー」
「そうだね」
俺は財布から小銭を出し、賽銭箱に投げた。そして、麻里奈とずっと一緒にいられますようにと祈った。
頭を上げ、横を見ると、麻里奈はもういなかった。どこに行ったのかとあたりを見渡していると、
「直人ー!、こっちだよー」
と麻里奈が手を振っていた。
俺は麻里奈の方に急足で向かった。
「今日早くない?」
「直人が長いだけだと思うけどなー」
「この前は麻里奈すごく長かったじゃん」
「あの時は欲張っちゃったから」
「そうだったんだ」
「今回は直人とずっと一緒にいられますようにって神様にお願いしよー」
「他の人に言ったら、願い事叶わなくなるって前に言ったよね?」
そう言うと、麻里奈はやらかしたと言わんばかりの表情をした。
「忘れてたの?」
「うん」
「でも、麻里奈は大丈夫じゃないかな?」
「そーなの?」
「その願いは俺が叶えてあげるから・・・」
そう言っている途中、とても恥ずかしくなった。すると
「もしかして、直人も私と似たような願い事なの?」
と聞いてきた。
「まあ、そうだけど」
「言っちゃったら願い叶わなくなっちゃうんだよー」
俺は完全に気が緩んでいた。すると、麻里奈が嬉しそうに
「直人の願いは私が叶えてあげる」
と言って俺の右手を握ってきた。
そう言われた時、やっぱり麻里奈には敵わないと思った。
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