第43話

 俺は首元がくすぐったくて目が覚めた。首元を見ると、麻里奈が嬉しそうに俺を見ていた。


「起きてたんだ」


「うん、直人が私に背を向けて寝てたからイタズラしちゃったー」


 イタズラ?俺に何をしたと言うのだろう?


「何したの?」


「なんだと思うー?」


「質問を質問で返さないでよ」


「そのうちわかると思うよー」


 麻里奈は何をしたのか教える気がなさそうだ。


「まあいいや」


 そう言って、俺は布団から出ようとした。すると


「もー出るのー?」

と言ってきた。


「だってもう九時でしょ?」


「まだ寒いよー」


 麻里奈が布団を引っ張っているから俺は布団から出ることができない。


「まだベットに居ようよー」


「わかった」


 そう言うと、麻里奈は布団の中に潜り込んだ。気になったから俺も布団の中に潜り込んだ。


「直人も入ってきたー」


 そう言って、麻里奈は俺の肩に頭を乗せた。


「何してるの?」


「直人の匂い嗅ぎたいなーって」


「麻里奈って匂いフェチなの?」


「そうだけど・・・、変かな?」


「変じゃないけど・・・」


「けど?」


「言ってからこうゆうことはやってほしいな」


「なんでー?」


「心の準備というか・・・。臭かったら嫌だから」


「ごめん」


 そう言った麻里奈の吐息が俺の耳にかかった。くすぐったくて、つい右肩が上がってしまった。すると、麻里奈の頭が俺の肩がぶつかってしまった。


「キャッ」


「ごめん。痛くない?」


「うん、大丈夫だよー。私こそごめん」


「大丈夫だよ」


「そろそろ出よっかー」


 そう言って、麻里奈はベットから出た。俺も後を追うようにベットから出た。スマホの画面で自分の顔をみると、いつも以上に髪型がグチャクチャになっていた。


 俺は髪を梳かしに洗面所に行った。すると、首元が赤くなっているのに気がついた。よく見ると、キスマークが付いていた。これが麻里奈の言っていたイタズラなのだろうか?そんなことを思っていると


「イタズラわかったー?」

と言って洗面所に麻里奈が入ってきた。


「キスマーク付けたの?」


「そーだよー」


「しばらく跡が残るじゃん・・・」


「私にもキスマーク付けてよ」


「な、なんで?」


「つけてあげたから、私にも付けてほしいの」


 麻里奈が勝手につけてきたのにと思いながら、


「い、いいよ」

と言ってしまった。


「じゃあ・・・、して」


 麻里奈は少し恥ずかしそうに首筋を出した。しかし、俺はどうやってキスマークをつければいいかわからない。


「は、早くしてよ。恥ずかしいから・・・」


「どうやってキスマークつければいいの?」


 そういうと、麻里奈は俺の首筋に唇をくっつけた。そして、強く吸ってきた。


「ちょっ、くすぐったいよ」


 麻里奈は首筋に唇をつけたまま、モゴモゴ何か言っている。多分、我慢してと言っているのだろう。そんなことを思っていたら、麻里奈は俺の首筋から離れた。


「やり方わかったー?」


「う、うん」


 俺は麻里奈の首筋に唇を強く押し付けた。そして、強く吸う。くすぐったいからなのか、麻里奈はクネクネと動いている。でも、しばらくすると、動かなくなった。俺はこの感触が心地よく、ずっと続けばいいと思った。すると


「な、長くない?」

と麻里奈が恥ずかしそうに行った。俺は麻里奈の首筋から唇を離した。


「やばっ」


 麻里奈は自分の首筋を鏡で見て驚いていた。


「こんなに赤くなるんだー」


「強く吸いすぎたかな?」


「少し痛かったかも・・・」


「ご、ごめん」


「でも、直人の愛情が伝わってきたよー」


「そ、そっか」


「何恥ずかしがってるのー?」


「べ、別に恥ずかしがってないし」


「直人が珍しく強がってるー」


 やっぱり、麻里奈には敵わないと思っていると


「直人の首元やばー」

と言われた。


 俺は鏡で首筋を見た。すると、ほぼ対称に二つの赤くなったキスマークが付いていた。


「思ったより目立つね」


「これで直人は私のものってわかるね」


「そんなことしなくても、麻里奈から離れることはないよ」


「こうゆうふうにしておけば、クリスマスの時みたいに逆ナンパされることないでしょ?」


「そうだね」


 麻里奈はクリスマスデートの時のことを結構気にしていたみたいだ。


「でも・・・」


「どうかした?」


 麻里奈は複雑な顔をしている。何か心配事がありのだろうか?」


「思ったより目立つね」


「でも、麻里奈は一つしかないじゃん」


「確かにー。直人の方が目立ってるね」


 そんなことを話していたら、あっという間に十一時前になっていた。


「もうこんなだー!」


「そろそろ行ってみる?」


「そーだねー」


 俺と麻里奈はようやく初詣に行く支度を始めた。麻里奈はクローゼットの中を漁り始めた。


「何探してるの?」


「マフラー探してるー」


「今日はそんなに寒くないよ」


「キ、キスマーク隠したいから・・・」


 麻里奈は顔を赤くして言った。そう言われると、俺もマフラーが欲しい。


「直人のマフラー欲しいでしょ?」


「う、うん」


「あったー」


 そう言って取り出したのは、ペアルックのマフラーだった。


「この前、お兄ちゃんからもらったんだー」


「そうだったんだ」


 そう言うと、麻里奈は俺の首にマフラーを巻きつけてくれた。


「これでよし!」


「ありがとう」


「じゃあ、行こっか」


「そうだね」


 そうして、俺と麻里奈は部屋を出た。


 





 


 


 


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