第39話
浅草駅の一番出口を出ると、人力車がたくさん道路に停まっているのが目についた。何よりも、外国人の多さに驚いた。
「こんなに外国人がいるとは思わなかったな・・・」
「そうだな、日本人よりも多いんじゃね」
葛西の言う通り、日本人より外国人の方が多い。人力車に乗っている人の大半は外国人だ。さすが、日本有数の観光地だと思った。
「とりあえず、雷門に行こう」
「そうだな」
そう言って、雷門に向かった。
雷門の前に来たが、立ち止まってしまう人が多く、なかなか門をくぐることができない。
「なかなか進まないな」
「そうだな・・・」
そんなことを言いながら、葛西はスマホで写真を撮っていた。
「結構良くね」
「そうだね、後でスマホに送っておいて」
「オッケー」
そんなことを話していると、やっと少しずつ進み始めた。
「あとどのくらいかかるのかな?」
「一時間くらい並ぶんじゃね」
そんなに並ぶと思っていなかった俺は少し驚いた。
「そ、そんな並ぶの?」
「そうだろ、元日だし」
普段、三が日を過ぎてから初詣に行くから、こんなに混んでいる初詣を知らない。
「参道の仲見世も混んでそうだな」
「そうだね」
「まあ、のんびり並ぶか」
そう言って、俺と葛西はスマホを見たりしながら、並んでいた。並んでいる途中、
「なんか、いい匂いしない?」
と葛西が言ってきた。確かに、甘い香りがする
「どこから?」
「あそこだ!」
そう言って、指差していたのは人形焼を売っているところだった。
「人形焼だね」
「一緒に買わない?」
「いいけど、列から出ないと買えなそうだよ?」
「じゃあ、俺買ってくる」
そう言って、葛西は列から出て、人形焼を買いに行った。運がいいのかわからないが、列が全く進まないから葛西は人形焼の入った袋を二つ持って列に戻ってきた。
「これ、お前の分な」
「ありがとう」
袋の中を見ると、二袋入ってきた。
「なんで二袋も買ったの?」
「米村さんの分も買った」
「ありがとう」
「ちゃんと俺が買ったって伝えといてな」
「わかったよ」
明日、麻里奈に会うからその時に渡そう。そんなことを思っていると
「まだ全然進まないな・・・」
とスマホをいじりながら葛西がつぶやいた。
「これだけ人がいるからな」
「もう三十分も並んでるよ」
「まだ半分も進んでないね」
本堂まではまだまだ程遠い。俺と葛西は再びスマホをいじり始めた。だんだんと話すことがなくなってきたから各々スマホをいじっていた。
「なあ、電波悪くね」
「そうかな?」
俺のスマホはちゃんと電波を受信している。
「俺だけかな?」
「日頃の行いが悪いからじゃない?」
「うるせー」
そう言いながら、葛西はスマホの電源を入れ直した。
「さっきより良くなったかも・・・」
「よかったな」
電波が入るようになって機嫌の良くなった葛西を横目にSNSを開こうとした。すると、全くアプリが開かない。俺のスマホが電波の受信をしなくなった。
「葛西のせいで電波入らないんだけど」
「俺のせいじゃねーよ!」
「冗談だって」
俺はスマホをポケットに入れた。すると、列が進み始めた。
「一気に進み出したな」
「みんな仲見世の方に入ってるね」
「そう言うことか・・・」
観光客は列から出て雷おこしを買ったりしている。だから一気に進み始めたのだろう。
「お賽銭の準備しないと」
そう言って、葛西はカバンから財布を取り出した。
「いくら入れるの?」
「七百七十七円かな」
「そんなに入れるの?」
「いっぱい入れたほうが神様も嬉しいでしょ」
葛西は神様をなんだと思っているのだろうか・・・。
「そうなのか?」
「そう言うお前はいくら入れるんだよ?」
「百二十五円かな」
「普通だな」
「普通でいいんだよ」
「まあ、彼女がいる人はそれでいいのかもな」
「関係ねーだろ」
「そろそろ、本堂に入れそうだ」
「本当だ」
並び始めて二時間、俺と葛西はやっと本堂に入ることができた。俺は百二十五円を賽銭箱に目掛けて投げた。そして、二礼二拍手して合掌した。俺は麻里奈といい関係が続きますようにと願った。その後、俺と葛西は本堂を出た。
「なんてお願いした?」
と葛西が聞いてきた。
「教えない」
「つまんないやつだな」
「だって言ったら願いが叶わなくなるじゃん」
「そんなこと信じてるの?」
葛西は少し馬鹿にするような口調で言った。
「じゃあ、葛西はなんてお願いしたんだ?」
「教えたら叶わなくなっちゃうから聞かないで」
葛西は相変わらず都合のいいやつだ。
「そんなことよりおみくじ引きに行こうよ」
「いいよ」
俺と葛西はおみくじを引きに行った。
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