第34話
俺と麻里奈は、革財布専門店に入った。
「ここの方がたくさんあるねー」
「そうだね」
この店は、棚一面が革製品で埋め尽くされている。普段、百均の財布を使っている俺には、全く縁のない財布たちがショーケースの中に入っている。
「これとこれどっちがいいと思う?」
そう言って麻里奈が指差していたのは、黒の長財布と茶色の二つ折り財布だった。正直、どっちもいい財布だからとても悩む。確か、お兄さんは長財布を使っていると言っていた。
「こっちの方がいいんじゃない?」
俺は、黒の長財布を指差した。
「私もそう思ってたー」
「そうだったんだ」
「すみませーん」
麻里奈は店員さんを呼んだ。在庫があったみたいで箱に入った財布を店の奥から出してきてくれた。無事に麻里奈は、お兄さんの誕生日プレゼントを買うことができた。
「買えてよかったね」
「うん、ありがとね」
「どういたしまして」
俺と麻里奈は、店を出た。
「せっかくだから、プリクラ撮らない?」
この前もとったのに?と思いながら、麻里奈との思い出作りができると思ったから
「いいよ」
と行った。
俺と麻里奈はプリクラと撮りに、四階に行った。
「ここもプリ機、豊富なんだよねー」
「そ、そうなんだ」
どの機械も同じだと思っているから、プリクラの機械による違いがよくわからない。
「これで撮ろー」
「わ、わかった」
そう言って、プリクラの機械の中に入った。中は、渋谷で撮った機械と変わらなかった。そんなことを思っていると、
「ぼーっとしないで撮るよ!」
と言われた。
すると、カウンドダウンが始まった。慌てて、モニターに出てるポーズを撮った。
「直人、可愛すぎる」
麻里奈は笑いながら言う。
「わ、笑わないでよ」
「ごめんごめん」
そんなことを言っていると、緑の枠まで近づくようにと指示が出ていた。
「直人、もっとこっちに来てー」
「う、うん」
麻里奈との距離が近くてすごく緊張する。すると、
「キスプリ撮らない?」
と聞いてきた。
「キ、キスプリ!?」
突然のことに俺は何も考えられなくなってしまった。すると、
「こっち向いて」
と言われ、顔を向けるとキスしてきた。
キスしたまま、カシャと言う音が響き渡った。フラッシュが焚き終わると麻里奈の唇は俺から離れた。麻里奈の顔を見ると、少し赤くなっていた。
「は、初めてのキスプリだったんだー」
「そ、そうなんだ」
「あ、次のポーズだよ」
その後も色々なポーズで撮ったが、キスが強烈すぎて脳死状態で撮っていた。
撮り終えた後、ペンで落書きをしていた。
「は、恥ずかしいから、何か描こっかー」
麻里奈は、恥ずかしそうにキスプリに何かを描いている。俺は、他の写真に名前などを書いた。
コピーされてきたプリクラを見ると、キスプリだけ浮いている感じがした。口元にピンク色のハートが描かれている。
「に、二枚も出てこちゃったね」
なぜか、キスプリだけ二枚出てきた。
「そ、そうだね」
「流石にスマホの裏に入れるわけには・・・」
麻里奈がそう言っている時、俺は自分の財布にキスプリを入れた。
「こ、ここに入れれば誰にも見られないよ」
「確かにー」
そう言って麻里奈も財布の中にキスプリを入れた。
「これで二人だけの秘密にできるねー」
「そ、そうだね」
俺と麻里奈は、二人だけしか知らない思い出を作った。
プリクラを撮り終え、ショッピングモールを出た。時計を見ると、まだ十二時前だった。
「この後、どうする?」
「時の鐘の方に行かない?」
「いいよ」
俺と麻里奈は歩いて時の鐘に向かった。さっきまで高い建物だらけだったのに、時の鐘が近づいてくると蔵造りが広がっているから街とは思えない。
「あれだー」
そう言って、指差していたのは時の鐘だった。
「結構、大きいんだね」
「そーだねー」
麻里奈はポケットからスマホを出し、写真を撮り始めた。
「これよくない?」
そう言って、さっき撮った写真を見せてくれた。その写真はとても綺麗に撮れていた。
「撮るの上手いね」
「まあ、自称インスタグラマーだからねー」
麻里奈は笑いながら言う。
「あ、あそこにスタバがある!」
「どこ?」
「あそこの木でできた看板だよー」
「本当だ」
「行こー」
「ちょっと・・・」
俺は麻里奈に手を引っ張られた。そして、スタバの中に入った。
「この新作飲みたかったんだよねー」
「そうだったんだ」
「直人も一緒に飲もー」
「うん、いいよ」
俺と麻里奈はスタバの新作を店の中で飲んだ。
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