第32話
バイト先のコンビニからアパートに帰ってきた俺は、部屋の中で麻里奈の部屋から出てきた男のことを考えていた。なぜ、あんな遅くに麻里奈の部屋に来る必要があるのだろうか?そんなことをベットで横になりながら考えていると、葛西からメッセージが届いた。
「(誠)元旦って暇?」
「(直人)暇だけど」
「(誠)初詣に行かない?」
「(直人)いいよ」
俺は、久しぶりに初詣に行くことになった。なぜか、ここ最近は初詣に行かないことが多い。久しぶりだから少しワクワクする。
「(誠)浅草の浅草寺に行かない?」
「(直人)遠くない?」
「(誠)たまにはいいじゃん」
「(直人)まあいいけど」
「(誠)じゃあ決定で」
俺は、スタンプを送った。浅草寺なんて小さい頃に一度行ったきりほとんど記憶にない。ほぼ初めて行くみたいなものだからとても楽しみだ。俺は、そんなことを思いながら、ベットの上で寝てしまった。
・・・
翌朝、俺はインターホンの音で目が覚めた。時計を見ると、まだ午前九時だった。セールスだったら面倒くさいなと思いながらベットから出た。そして、俺は玄関を開けた。すると、麻里奈が立っていた。
「ど、どうした?」
「話があるんだけど・・・」
そう言われ、麻里奈を部屋に上げた。話ってなんの話だろう?
「お兄ちゃんの誕生日が明日なんだけど・・・」
「そうなんだ」
「プレゼント選び、手伝ってくれない?」
「いいけど・・・」
そう入ったが、プレゼントのセンスは全くと言っていいほどない。
「やったー、これでお兄ちゃんに文句言われないで済みそー」
「ど、どこで買うの?」
明日渡すのだろうから、もうあまり時間はない。だから、インターネットの通販などで買うことはできないだろう。
「とりあえず、隣町のショッピングモールに行こうかなーって感じ」
麻里奈はとても余裕を持った感じだ。どこからその余裕が来るのだろうか?
「わ、わかった」
「そういえば、直人はパジャマだねー」
俺は、インターホンで目覚めたからパジャマのままだった。
「き、着替えてくる」
そう言って、俺は寝室でパジャマから着替え始めた。すると、麻里奈がドアを開けてきた。
「き、着替えてるから・・・」
「いーじゃん、付き合っているんだから」
「は、恥ずかしいからダメ」
そう言って、俺はドアを勢いよく閉めた。初めて、人にこんな姿を見られて恥ずかしいと思った。麻里奈と付き合ってからとても自分が女々しくなったと思った。
着替え終え、俺は寝室を出た。すると、落ち込んだ様子で床に座っている麻里奈が目に入ってきた。
「どうしたの?」
「さ、さっきはごめん」
とても落ち込んでいるトーンで言ってきた。
「別にいいけど・・・」
「私のこと嫌いになった?」
なんでそうなるのだろうか?そんなことで嫌いになるわけないのに・・・。
「大好きだよ」
そう言って、俺は座っている麻里奈に抱きついた。俺から麻里奈に抱きついたのはこれが初めてだ。
「うわっ」
今まで聞いたことがない麻里奈の声を聞いた。
「驚いた?」
「う、うん。すごく、ドキドキしてる」
俺は、初めて麻里奈をドキドキさせることができたと思う。そんなことを思っていると、麻里奈から心臓の鼓動が俺の体に伝わってきた。俺は、初めての体験に驚きを隠せない。
「ほ、本当にドキドキしてるね・・・」
「そ、そんなこと言わないでよ・・・」
麻里奈はとても恥ずかしそうに言った。
「なんで?」
「は、恥ずかしいから・・・」
俺はそう言われた後、麻里奈から離れた。
「これで同罪だね」
「わ、私の方が直人より恥ずかしかったー」
麻里奈は顔を真っ赤にしながら言ってくる。
「か、変わらないよ」
そういうと、麻里奈は俺の頬にキスしてきた。
「し、仕返しだからね!」
そんな麻里奈の様子が可愛くて、俺は微笑んだ。
「な、なに笑ってるのー!」
「可愛いなーって」
「こ、こんな姿、直人に見せたくなかったのに・・・」
「なんで?」
「見た目がギャルなのにこんなことで恥ずかしがってるって変じゃん」
「変じゃないよ」
「ほ、本当に?」
「うん。だから、もっと素直になっていいよ」
「う、うん」
俺は、麻里奈の新たな一面に出会えた。本当は恥ずかしがり屋というところだ。多分、今まで恥ずかしいところを見られたくないから、俺が恥ずかしがるようなことをしてきたのだろう。
「もっと素直になる」
麻里奈は上目遣いでそう言ってきた。
「だから、キスして・・・」
一瞬、なんて言ったのかよくわからなかった。キスってあのキスだよな。そんなことを思っていると
「まだー?」
麻里奈は目を瞑って待っている表情をしている。俺は、麻里奈の唇にキスした。
「こ、これでいいの?」
「そーだよー」
そう言って、麻里奈は俺に抱きついてきた。
「そ、そんなことより、プレゼント選びはどうするんだっけ?」
「あ、忘れてた」
俺と麻里奈は身支度をして部屋を出た。
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