SIDE B

 直人の両親は新幹線に乗って、新青森駅に向かっていた。


「直人の部屋、散らかってなかったな」


「そうだな。ギャルがいたからな・・・」


ギャルって言い方やめなさいよ」


「わ、悪い」


 そう言って、父は缶ビールを飲む。全く悪いと思っていない様子だ。


「麻里奈ちゃん、礼儀正しい子だったわね」


「そうだったな」


「でも、あんな可愛い子が直人の彼女なんて・・・」


「そんなこと言ったら直人が可哀想だろ!」


 父は少し強めの口調で母に言った。


「あ、あなただって最初は現実を受け入れてない感じだったじゃない!」


「あ、あれは違うんだ」


「何が違うのよ」


 母は、鋭い目つきで父に問いかける。


「ギャルがいたから・・・」


「そういえば、あなたはギャルが苦手だったわね」


 二十年ほど前、父はギャルに絡まれたことがあり、それ以降ギャル全般を苦手としている。


「でも、見た目だけで中身はいいとこのお嬢さんって感じだったな」


「もしかしたら、社長令嬢だったりするのかしら?」


「もしかしたらそうかもな」


「そ、それって逆玉じゃない!」


「まあ、いいんじゃない」


 新幹線内で両親は勝手な妄想を膨らましている。


「また近いうちに直人の部屋に行ってみるか」


「そうね、今度はちゃんと連絡してからいきましょ」


「そうだな、そうしないと・・・」


 父が話しているとき、向かい側から来た新幹線の風切り音で遮られてしまった。


「なにか言った?」


「な、なんでもない」


「なんか変なことを言おうとしたんでしょ?」


「ち、違うって・・・」


「まあ、高校生らしい恋愛をしてくれれば文句は言いません」


「そ、そうだな」


 父は、俺もそんな高校生活を送ってみたかったなーと心の底から自分の息子に嫉妬した。


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