第27話

 洗面所から出ると、麻里奈がスマホで何かを見ていた。


「何見てるの?」


「赤ブタの映画みてたー」


「そうなんだ」


 そう言って、麻里奈のスマホの画面を見ると、この前観た映画の前作だった。


「一緒に観ない?」


「いいよ」


 俺と麻里奈はテーブルの上に立てたスマホで映画を観る。映画のワンシーンで現実世界を生きていると思ったら、夢の中だったというシーンがあった。このシーンを見てから、今いる俺の世界はもしかしたら夢なのかのしれないと思い始めた。俺は本当に麻里奈と付き合っているのかと疑問に思い始めた。こんな俺が麻里奈と付き合うなんてあり得るのだろうか。


「ねえ、俺と麻里奈って本当に付き合っているの?」


 映画を観ている途中にも関わらず、俺は麻里奈に聞いてしまった。


「うん、付き合ってるよ」


 やっぱり、夢ではなかったようだ。俺はとても安心した。


「突然とうしたの?」


 麻里奈は少し戸惑った様子で聞いてくる。


「麻里奈と付き合うなんて夢みたいだから・・・」


 そういうと、麻里奈は顔を赤くした。


「き、急にそんなこと言わないでよ」


「ご、ごめん」


 そういうと、麻里奈は俺の口に接吻キスしてきた。俺は当然のことに驚いた。


「これが私の気持ちだよ?」


 俺はあまりに急なことに言葉が出ない。


「い、嫌だった?」


「嫌じゃないよ」


「だったら、今度は直人からして欲しいなー」


 麻里奈は、上目遣いでそう言ってきた。俺は麻里奈にさっきより少し長い接吻キスをした。


「もっと直人のこと好きになっちゃったー」


「お、俺も麻里奈のこともっと好きになった」


「やったー」

と言い、俺に抱きついてきた。抱きついてきた反動でテーブルの上に置いたスマホが俺の膝に落ちてきた。


「痛っ!」


「だ、大丈夫?」


「うん、大丈夫」


「そ、そろそろ寝よっか?」


「そうだね」


 そう言って、俺と麻里奈は寝室のベットに行った。先に俺がベットに入った。すると、麻里奈は俺とくっつくようにベットに入ってきた。俺は、麻里奈に背を向けながら横になった。麻里奈は、俺にバックハグをしながら


「二人でいると暖かいね」

と言ってきた。


「初めて俺の部屋にきた時にも言ってたよね」


「言ったかもー」


 この前より、麻里奈との距離が近いから、吐息などが全て俺の体に伝わってくる。


「直人の頭、いい匂いがするー」


「ヘアオイル塗ったからかな・・・」


「そうなんだー」


 そういうと、麻里奈はスースー言いながら眠ってしまった。多分、人混みの中歩いたりしたから疲れたのだろう。


 麻里奈が俺に抱きついているのに、なぜか今日は眠たくなってきた。だんたんと瞼が重たくなってきた。



・・・



 目を覚ますと、麻里奈はまだ背後から俺に抱きついて寝ていた。麻里奈を起こさないように、そーっとポケットからスマホを出した。画面を見ると、もう少しで十時になるところだった。


 スマホを見ていると、天野さんからメッセージが届いた。


「(天野)デートどうだった?」


「(直人)うまくいきました」


「(天野)よかったー」


 メッセージのやり取りをしていると、


「誰にメッセージ送ってたのー?」

と麻里奈が耳もとで囁いてきた。


「お、起きてたの?」


 俺は、突然のことに驚いた。なぜなら、まだしばらく起きないと思っていたからだ。


「今起きたところだよー」


「そ、そうなんだ」


 そういうと、麻里奈は俺から離れてベットを出た。俺もベットから上がろうとしたが、体が痛くて動かない。多分、姿勢を変えて寝なかったからだろう。しばらくしてやっとベットから起き上がることができた。


 ベットから出ると、麻里奈が紅茶を入れてくれてた。


「キッチン借りてた」


「紅茶入れてくれたの?」


「うん」


「ありがとう」


 俺と麻里奈は、テーブルの上に置いてある紅茶を飲み始めた。麻里奈が入れてくれたからか、いつもより紅茶が美味しく感じる。


「そうだ!」


 そう言って、麻里奈はボストンバックの中から何かを探し出した。


「どうしたの?」


「直人にプレゼント」


 そう言って渡してきたのは、四角い箱に入ったものだった。


「何これ?」


 なんだかわからず、思わず声に出てしまった。


「開けてみてー」


 そう言われて、俺は箱の中を開けた。すると、高級そうな瓶に入った香水が出てきた。


「香水?」


「そうだよー」


「こ、こんないいものもらっていいの?」


「うん、プレゼントしたくて買ったからー」


「ありがとう」


 俺は、初めて女子からクリスマスプレゼントをもらった。


「喜んでもらえてよかったー」


 麻里奈は少し安心した様子だった。


「菜々子と一緒にこの香水探したんだよねー」


「そうだったんだ」


 そんなことを話していると、インターホンが鳴り響いた。


「ちょっとみてくる」


「うん」


 俺が玄関を開けると、俺の両親が立っていた。

 


 








 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る