第六章

第26話

 俺と麻里奈は渋谷から電車に乗り、アパートに向かっている。


「私、初めて自分の好きな人から告白されたんだー」


 麻里奈はとても嬉しそうに言ってくる。


「そ、そうなんだ」


「だからすごく幸せ」


 麻里奈は俺のどこが好きになったのだろう?俺はとても疑問に思った。


「な、なんで麻里奈は俺のことが好きなの?」


「文化祭の時のこと覚えてる?」


「文化祭の時・・・?」


「後夜祭の時、助けてくれたじゃん」


 そう言われ俺は思い出した。


・・・


 あれは、後夜祭でクラスメイトと校庭で花火を見ている時、後ろから


「ちょっと無理です」


「えー、いいじゃん」

という話声が聞こえてきた。


 多分、先輩がナンパをしているのだろう。俺はその場を離れようとしたが


「だから、無理だって」


「先輩に対してそんな口の聞き方はないだろ?」

とどんどんエスカレートしていった。


 俺は放っておけず、知らない人だったが


「先輩、先生が呼んでましたよ」

と言った。


「マジかー」


 そう言って、校舎に入って行った。


「あ、ありがとう」

と女の人にお礼を言われた。暗くて誰だかわからなかったが


「どうも」

と言って校舎に戻った



・・・



「あれ、麻里奈だったんだ」


「そーだよー、全く顔見てくれなかったから悲しかったよー」


「暗くて見えなかったんだよ」


「でも今日気づいてもらえてよかったー」


 麻里奈は嬉しそうに話す。その様子を見ている俺まで嬉しくなってくる。この笑顔をずっと見ていたいと思った。

 


・・・



 俺と麻里奈はアパートの最寄り駅に着いた。改札を出て、アパートに向かっている途中、


「今日、直人の家に泊まってもいい?」

と麻里奈が聞いてきた。


「どうしたの?」


「クリスマスだからずっと居たいなーって」


 麻里奈は少し顔を赤くしながら言った。


「い、いいよ」


 俺の部屋に麻里奈が泊まることになった。麻里奈が俺の部屋に泊まるのは二回目だが、まだドキドキする。そんなことを思っていると


「ねえ、直人の手繋ぎたい」

と言ってきた


「い、いいよ」


 俺と麻里奈は、恋人繋ぎをしてアパートまで歩いて帰った。


 アパートに着き、部屋に入ろうとすると


「荷物とってくるね」

と言われた。


「わかった」


 そういうと、麻里奈は自分の部屋に入って行った。俺も自分の部屋に入った。荷物を置いて、ロングコートをハンガーにかけていると、インターホンが鳴った。玄関を開けると、ボストンバックを抱えた麻里奈がいた。


「そんなに荷物って必要なの?」


「うん、だってお泊まりセットだもん」


「そ、そっか」


「上がっていい?」


「うん、いいよ」


 麻里奈を部屋に上げた。

 

「荷物どこに置けばいい?」


「テーブルの横に置いていいよ」


「わかったー」


 そういうと、麻里奈はボストンバックをおき、いろいろなものを取り出し始めた。


「お風呂入った?」


「まだ入ってないよ」


「一緒に入る?」


 麻里奈は恥ずかしげもなくそんなことを聞いてくる。


「な、何を言ってるの!?」


「まあ、冗談だけどね」


 俺は、その言葉に安心したが、少しがっかりした。


「でも、いつかは一緒に入ろうね」


 俺は、その言葉に顔をかつてないぐらい赤くした。


「あー、また顔が赤くなってる」


「だって、あんなこと言われたら・・・」


 そういうと、麻里奈も顔を赤くした。多分、自分で言ったことが今更になって恥ずかしくなったのだろう。


「さ、先に風呂入っていいよ」


「あ、ありがとう」


 そういうと、麻里奈は洗面所に行った。俺は、寝室に行った。そして、ベットの上で横になったままスマホを見ていた。すると、葛西からメッセージが届いた。


「(誠)デートはうまくいった?」


「(直人)うん」


「(直人)葛西のおかげでうまく行ったよ」


「(誠)よかったな」


「(直人)それで」


「(直人)米村さんと付き合うことになった」


「(誠)マジで!?」


 メッセージを見て分かる通り、葛西はとても驚いた様子だった。多分、俺が告白するなんて思っていなかったのだろう。


「(誠)告ったの?」


「(直人)うん」


「(誠)夢じゃなくて?」


「(直人)現実だってば」


「(誠)よかったな」


「(直人)色々とありがとう」


「(誠)米村さんのこと泣かせたりするなよ」


「(直人)そんなことしないって」


「(誠)まあわかってるけど笑」


 そんなメッセージを送っていると、ドアを叩く音がした。ドアを開けると、モコモコしたパジャマを着たすっぴん姿の麻里奈が立っていた。


「お風呂でたよ・・・」

と斜め下の方を見ながら言った。


「わ、わかった」


 すっぴん姿の麻里奈を見るのは二回目だが、まだ見慣れない。つい、俺は麻里奈のすっぴん姿をじっくりと見つめてしまった。


「そ、そんなに見ないでって」


 そう言われたが、俺は聞く耳を持っていなかった。メイクをしていると、キレイなギャルだけれど、すっぴん姿は可愛いギャルになっている。俺はそのギャップの虜になってしまったのだろう。


「そ、そんなにすっぴんが変なの?」


 麻里奈は不安げに聞いてきた。


「ううん、可愛いよ」


「あ、ありがとう」


 麻里奈は、斜め下を見ながらそういった。なぜか、目を合わせようとしてくれない。


「すっぴんの方が直人は好きなの?」

と呆れ気味に聞いてきた。


「メイクした姿もキレイで好きだよ」


「そ、そうなんだー」


 麻里奈は、少し安心した様子だった。


「そんなことより、早くお風呂入ってきなよ。冷めちゃうよー」


 俺は、そう言われて風呂に入った。俺は風呂の中で寝床について考えていた。今日もシングルベットの上で一緒に寝るってことかな?そう考えた俺は、慌てて体を洗い始めた。いつも適当に洗っているが、麻里奈に臭いと思われないようにいつも以上に気を使って洗った。シャンプーも同様にいつも以上に念入りにした。


 風呂から出た俺は、この前美容室でもらったヘアオイルを初めて使うことにした。パッケージに書いてある説明文を読んだがイマイチよくわからない。とりあえず、髪の毛をドライヤーで乾かして、髪全体にヘアオイルを塗った。

 













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