第24話

 麻里奈を待っていると、


「お兄さんって今一人?」

と女の人が声をかけてきた。


 俺が答えようとすると


「この後、一緒にどこか行かない?」

と言われた。


 これって逆ナンパってやつなのか?俺は、初めてのことに少し驚いた。とりあえず、断らないと行けないと思い


「ごめんなさい、待ってる人いるんで・・・」

と言った。


「そんな冗談言わなくていいからさー」


 なかなか女の人は俺から離れてくれない。早くどこかに行ってくれないかなと思っていると、


「遅くなってごめーん」

と言って麻里奈が俺の腕に抱きついてきた。抱きついてきた時、甘い匂いがふわっとしてとてもドキドキした。


「チッ、私より可愛い子と一緒だったの?」


 捨て台詞を吐いて、女の人はどこかに行ってしまった。


「ありがとう」


「今日は、私以外の人を見ないで欲しいな・・・」


 麻里奈は囁くように言った。


「ご、ごめん・・・」


「そんなことより、撮ろっか!」


 俺と麻里奈は、プリクラ機の中に入った。俺は、初めてのプリクラだから何がなんだかよくわからない。

 

 俺が戸惑っていると、背後からグリーンバックが降りてきた。


「もっとこっち来てー」


 そう言われ、俺は麻里奈に近づいた。すると、モニターに手本のポーズが映る。


「このポーズやろー」


 米村さんが指差していたのは、猫の手みたいなポーズだった。これだったら俺でも簡単にできそうなポーズだ。


「わ、わかった」


そういうとすぐに「カシャッ」と撮られる音がした。


「次はこのポーズしよ」


「いいよ」


 プリクラってこんな感じのペースで撮っていくものだと初めて知った。そんな感じで合計6回も撮った。


 その後、俺と麻里奈は落書きをし始める。


「直人、女の子みたーい」


 俺は、液晶に映っている自分を見て驚いた。なぜなら、自分が自分ではない感じがするからだ。麻里奈はプリクラに慣れているからか、結構いい感じに撮れている。


「麻里奈も目がさらにデカくなってるよ」


「直人ほどじゃないけどねー」


 普段、一重だからそう言われても仕方ない。


「ねえ、ここなんて書きたい?」


「名前でいいんじゃない?」


「オッケー」


 そんなことを話していたら、あっという間に時間制限が過ぎ、写真がプリントされて出てきた。


「どっちがいい?」


「じゃあ、黒い方」


「いいよ」


 俺は、縁が黒い方を貰った。


「あっちの方いこー」


 そう言われ、俺と麻里奈はスマホケースの売っている店に入った。


「直人ってスマホ何使ってるの?」


「14PRO使ってる」


「じゃあ、これだね」


 そう言って、麻里奈は14PRO対応のクリアケースを手に取った。


「俺は大丈夫だよ」


「今のケースだとプリ入れても見えないじゃん」


「確かに・・・」


「それにこれだと私とお揃いだし」


「そうなんだ」


「お揃いにしない?」


 麻里奈は、上目遣いでそう訴えてくる。


「す、する」


 俺は、麻里奈と同じメーカーのクリアケースを買った。そして、プリクラをスマホとケースの間に挟み込んだ。


「これで私と一緒だね」


「そ、そうだね」


「あー、また顔が赤くなってるー」


 そう言って、麻里奈は笑っている。


「そ、そんなに揶揄わないでよ」


「揶揄ってないよー」


 そんなことを話しながら、俺と麻里奈は109を出た。外に出て


「パルコに行ってみない?」

と言ってみた。


「私も行きたいと思ってたー」

と麻里奈が嬉しそうに言った。


「ならよかった」


「私たち結構、気が合うんじゃない?」


「そうだね」


 俺と麻里奈は、パルコに向かった。向かう途中、クリスマスイブだから人は多いが、さっきの竹下通りほどではなかったから安心した。


「そんなに人いないね」


「原宿の方がすごかったねー」


 そんなことを話しながら、俺と麻里奈はパルコの中に入った。そして、六階に行った。カップルも多いが、キャラクターショップなどもあるから家族連れも多く賑わっていた。


「これほしーい」


 そう言って、麻里奈が手に取っていたのは、人気アニメのキャラクタぬいぐるみだった。


「買ってあげるよ」


「いいの!?」


 目をキラキラして言った。


「いいよ」


「やったー」


 麻里奈はそのぬいぐるみを抱えて、キーホルダーのコーナーに行った。


「一緒のキーホルダー買わない?」


「いいよ」


「直人はどれがいい?」


「そうだな・・・」


 俺は、悩みに悩んで麻里奈が持っているぬいくるみと同じキャラクターのキーホルダーを手に取った。


「これにしない?」


「いいよー」


 キーホルダーとぬいぐるみを持って、俺と麻里奈はレジに並んだ。


 買ったばかりのキーホルダーを俺は、スマホケースに取り付けた。


「直人、つけるの早いってー」


「そうかな?」


 麻里奈は、キーホルダーをつけるのに少し苦戦している。


「つけようか?」


「う、うん。お願い」


 そう言われ、俺はキーホルダーを麻里奈のスマホに取り付けた。


「ありがとう」


 麻里奈はとても嬉しそうに笑う。俺は、この笑顔を独り占めできてとても嬉しい。







 




 

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