第23話
あっという間に時が流れ、クリスマスデート当日になった。九時になったら俺の部屋の前に集合する約束になっている。
俺は、緊張して全く寝ることができなかった。緊張の理由は、米村さんに告白するというミッションがあるからだろう。いろいろなことを考えてしまったから寝ることができなかった。
髪をセットして、俺は部屋を出た。すると、もう米村さんは俺の部屋の前で待っていた。スマホを見るとまだ8時50分だった。
「遅くなってごめん」
「ううん、私が早く来ただけだからー」
俺はつい、米村さんのことを見つめた。よく見ると、いつもと少し違うメイクだ。いつも以上にキレイに見える。そして、今日はとても寒いのに米村さんは、とても短いズボンを履いている。寒くないのかなーと心なかで思った。
「じゃあ、行こっか」
そう言われ、俺と米村さんは最寄駅に向かうことにした。
「ねぇ、手繋がない?」
と米村さんに言われた。
「うん、いいよ」
俺は、初めて米村さんと手を繋いだ。米村さんの手は冷たく、小刻みに震えている感じがした。多分、俺の部屋の前で結構待っていたのだろう。
「直人の手大きいね」
俺は、初めて下の名前で呼ばれた。
「そ、そうかな・・・」
俺が動揺していると、
「あー、顔が赤いよ」
と揶揄ってきた。
「麻里奈は手が小さいね」
そういうと、米村さんも顔を赤くした。多分、俺以上に顔が赤くなっているだろう。
「恥ずかしいって・・・」
「ごめん・・・」
俺は、少し調子に乗りすぎたかもしれない。
「でも、名前で呼んでくれたの嬉しかった」
「俺も下の名前で呼んでもらえて嬉しかったよ」
「今日からお互い名前呼びにしよ」
名前呼びをし合うことによってもっと距離が近づいた気がした。そんなことを話していたらあっという間に駅に着いた。
改札を通る時、俺は麻里奈から手を離した。手を離した時、そこから温もりがなくなり、少し寂しくなった。
改札を通り、ホームに降りるとちょうど電車が来ていた。俺と麻里奈はその電車に乗り込んだ。電車の中で麻里奈は、俺の肩に頭を寄かけてきた。
「こうしてもいい?」
「い、いいよ」
駅に着くまで麻里奈はずっとこのままだった。
・・・
俺と麻里奈は、明治神宮前に降りた。俺は、あまりの人の多さに驚いた。今年のクリスマスイブは、日曜日だからこんなに人が多いのかもしれない。俺は、麻里奈と逸れないように手を繋いだ。
なんとか改札を出て、俺と麻里奈は地上に出ることができた。
「すごい人の数だね・・・」
「私もこんなにいるとは思わなかった」
俺と麻里奈は人混みの中、竹下通りに入った。竹下通りに入ったが全くと言っていいほど進まない。周りの人の声を聞くと、ユーチューバーやスカウトマン、スニーカーを買ってくれる人などがたくさんいるらしい。
「全然進まないねー」
「そうだね」
そんな会話をしていると、
「おねーさん、こういうの興味ない?」
とチェックシャツを着たおじさんが麻里奈に名刺を渡していた。
「私、こーゆーの興味ないんで」
「そんなこと言わないで・・・」
「ごめんなさーい」
そういうと、おじさんは人混みに埋もれていった。
「なんて書いてあるの?」
「芸能事務所の人みたい」
「そうだったんだ」
米村さんほど可愛い人だったら、スカウトされてもおかしくないと思った。そんな人とデートできる俺は幸せ者だ。
少しづつ動き始め、目的地のプリクラ店の前に着いた。しかし、出る人と入る人で入口が詰まっていた。
「違うところで撮ろっかー」
「そうだね」
俺と麻里奈は、なんとか竹下通りから抜け出そうとしたが、どこの道も詰まっていて踏んだり蹴ったりの状況だ。
・・・
その後、竹下通りをなんとか抜け、渋谷まで歩いて向かうことにした。
「すごい人だったね」
「そーだねー」
麻里奈は、少し疲れ切っているような感じだった。多分、竹下通りを抜けるまでに五人のスカウトマンに声をかけられたから疲れたのだろう。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよー」
「どこ行きたい?」
「109行きたーい」
俺と麻里奈は109に行くことにした。
スクランブル交差点を渡って俺と麻里奈は、109の中に入った。109の中は、女の人だらけでどこを見ればいいのかわからない。
「プリ機あるところにいこー」
そう言われ、俺と麻里奈は地下二階に行った。そこは、男の俺が居てはいけない雰囲気がした。なぜなら、壁の色がカラフルでインテリアも女の子らしいものばかりだからだ。
「このプリ機が一番盛れるんだよねー」
「そうなんだ」
「髪セットしてきてもいい?」
「いいよ」
そういうと、麻里奈はメイクスペースに行ってしまった。俺は、麻里奈を待つことにした。
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