第19話

 テスト最終日、四日間あった定期テストがやっと終わる。少しワクワクした気持ちで登校した。しかし、今日は物理基礎のテストがある。このテストで三十点以上を取らないと追試を受けないといけないくなるかもしれない。そんな危機が迫った中、テストが始まった。



・・・



 なんとか全てのテストを終えた。ホームルームが終わると、


「テストできた?」

と葛西が聞いてきた。


「物理基礎以外は結構できたよ」


「つまんねー奴だな」


「つまんねーってなんだよ」


 おそらく葛西は、全ての教科で全く歯が立たなかったのだろう。


「物理基礎はもしかしたら平均点が三十点以下かもしれないな」


「そんなことあるの?」


「去年はあったらしいよ。部活の先輩が言ってた」


 葛西の話に驚いた。平均が赤点ってあり得るんだ。こうなると生徒よりも先生に問題があると学校は思わないのだろうか。


「まあ、多分今年もそんな感じだと思うな」


 そんな話をしていると、先生が教室に来て


「葛西、ちょっと来い」

と葛西を呼び出した。


「わ、わかりました」


 葛西は、少し動揺した様子を見せた。その姿が少し面白かったから笑ってしまった。多分、成績のことで呼び出されたのだろう。明日、どんな顔で学校に来るのか少し楽しみだ。


 俺は、筆記用具をリュックに入れ、教室を出た。そして、自転車置き場に向かった。


 俺は、自転車を押して校門を出ようとすると、


「鈴木くん!」

と誰かに声をかけられた。


 声の方を向くと、マフラーを巻いた米村さんが一人で立っていた。


「どうしたの?」


「この後って暇?」


「暇だけど・・・」


「映画見に行かない?」


「いいよ」


「やったー」


 俺と米村さんは、隣町にある映画館に行くことになった。とりあえず、歩いて駅に向かうことにした。


「なんの映画見るの?」


「この映画だよー」


 そう言って、スマホの画面を見せてきた。そこに書いてあったのは、俺も見ようと思っていた「赤ブタシリーズ」の新作映画だった。


「米村さんも赤ブタ見てたの?」


「うん、先月見たらハマちゃったのー」


「そうだったんだ」


 そんな話をしていたら、駅に着いた。みんな部活があったりするからかあまり学生はいなかった。


 俺と米村さんは電車に乗った。電車に乗ってしばらくすると、米村さんは寝てしまった。多分、テストの疲れが溜まっていたのだろう。俺は、駅に着くまで寝かせることにした。

 

「米村さん、もう着くよ」


 そういうと、目を擦りながら辺りを見渡す。


「うーん、もう着くの?」


「うん」


 そういうと、電車のドアが開いた。俺と米村さんは、寝過ごすことなく無事に降りることができた。


 改札を出て、少し歩くとショッピングモールに着いた。その中にある映画館に向かった。そして俺と米村さんは、映画館の中に入った。平日の昼間だが、思ったよりも人が多い。


「俺チケットとってくるよ」


「じゃあ、私ポップコーン買ってくるね」


「ありがとう」


 俺は、チケット売り場に並んだ。ここの映画館はいまだに人がカウンターで売っているからとても混んでいる。


 十五分くらい並んでやっとチケットを買うことができた。上映時間ギリギリに行ったからか一番後ろの席しか取れなかった。カウンターから出て辺りを見渡していると


「鈴木くん!」

とポップコーンを両手で抱えた米村さんが声をかけてきた。


「買えたよ」


「あと五分で始まるから急ご!」


 俺と米村さんは足早にスクリーンに向かった。スクリーンの中に入ると、ほとんどの人はもう座っていた。


「席どこー?」


「一番後ろの真ん中らへん」


 俺と米村さんはなんとか上映時間前に席に着くことができた。座ったと同時に部屋が暗くなった。そしてスクリーンに広告が流れ始める。しばらくして映画が上映された。



・・・



 俺と米村さんは、映画を見終えて映画館を出た。駅に向かっている途中、映画の感想を言い合った。


「よかったね」


「うん、めちゃくちゃ感動した」


 上映中、米村さんは泣きながら映画を見ていた。確かに今回の映画は、かなり感動する場面が多かった。普段、映画を見てもあまり泣かない俺が少し涙を浮かべてしまった。


 俺と米村さんは、駅の中に入り電車を待っていた。すると、


「麻里奈?」

と米村さんを呼ぶ声が聞こえた。声の方を向くと松山さんがいた。


「菜々子じゃん!どうしたの?」


「たまたまいたから声かけた感じ、鈴木と出かけてたの?」


「そうそう」


 米村さんと松山さんの会話のペースが速すぎて聞いているだけで精一杯だ。そんなことを思っていると


「鈴木、麻里奈に変なことすんなよ」

と言われた。


「は、はい」


 俺は突然のことに少し動揺してしまった。


「菜々子、あんまり鈴木くんを驚かせないのー」


「あーしは、麻里奈のことが心配だから・・・」


「ありがとう。あっ、電車きた」


 俺と米村さんは、電車に乗った。


「気をつけてな」


「ありがとう」


 米村さんがそういうと電車のドアが閉まった。


「さっきは菜々子がごめん」


「大丈夫だよ」


「ちょっと気が強いだけだから」


「松山さんは、一緒に住んでること知ってるの?」


「うん、教えたよー」


「そうなんだ」


 それだったら米村さんと一緒にいても不思議に思われないだろう。俺と米村さんは、無事にアパートに帰ることができた。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る